〇エピソード5 一足早い春の訪れ

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 裏表紙のあらすじを読むと、どうやら雪女の末裔の「わたし」といじめっこのKが心中するまでの話らしい。  目次を開く。『ずるいおんな』『クズの本領』『さよならが言えなくて』『死ぬなら春の海がいい』の四つの章からなっている。  最初の数ページを読む。クラスでも馬鹿にされがちな陰キャ女子である「わたし」は、Kという男子生徒に校舎裏に呼び出され、告白をされる。もちろんそれは嘘の告白だ。しかし「わたし」は告白を受け入れる。Kを殺して自分が生き延びるために。  俺は自分が震え出すのを感じていた。  嘘告白――これってもしかして、俺と七瀬みくるをモデルにしているのだろうか。 『でもまあ、そんなお前でも何か適職があるんじゃね。嘘つきをいかしたいよな。そうだなぁ……政治家、小説家、あとは結婚詐欺師とか!』  俺はいつだったか七瀬みくるにそう勧めた。  あの時は冗談で言ったのに、まさか本当に小説家になってしまうとは。七瀬みくるはどうしようもない嘘つきだけど、その持っているカードで生きていく方法を見つけたのだ。
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