22人が本棚に入れています
本棚に追加
「七瀬みくるって今どこにいる?」
俺は目の前の彼女に詰め寄るように聞いた。彼女は「わかんない」と気圧されたように小さな声で答えたが、迷いながらも外を指さした。
「会場を出て行ったと思う。たぶん駅方面」
「わかった。ありがと」
気づけば俺は走り出していた。合格発表の日のように、ショッピングモールで七瀬みくるに似た人を見つけたときのように。
俺が走り出すのはいつだって、七瀬みくる、ただひとりあいつのせいだ。
「もうすぐ成人式始まるけど」
森崎が声をかけてくるが俺はそれに手をひらひら振って答えた。
「悪い。俺、成人式パス」
森崎がぽかんと口をあける。
「成人式パスって……お前いったい何しにきたんだよ」
俺は胸を張って答えた。
「七瀬みくるに会いにきたんだよ!」
会場を飛び出して駅のほうに向かう。右手には七瀬みくるの本を握り締めて。
最初のコメントを投稿しよう!