Chapter.01 カモ

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【Act.08】 【アッキー】と音信不通になった私は、道標を失ったようだった。 「会いたい」が【アッキー】の中ではNGワードだったのか? 会いたくなければ、そう言ってくれれば、無理強いはしないつもりだった。 それなのに、現実世界も【SEVEN's GATE(セブンス・ゲート)】の世界からも居なくなった。 一方的に信頼していただけに、ショックだった。 毎日のように時間を忘れて話していたから、既に私の中では、居て当たり前の存在になっていた。 自分でもびっくりするぐらい、心が空虚になった。 まるで、振られた気分……。 そう思って気づいた。 私は【アッキー】に恋をしていたのかなって……? 初恋の人の代わりに相談に乗ってくれて、親身に聞いてくれて、こちらが真剣だとわかると、すぐに手を差し伸べてエスコートするように、優しく導いてくれた。 今思えば……私の初恋の人にそっくりだ。 だから、ドキドキしたんだ。 もっと彼を知りたいと欲が出たんだ。 もしかして、姿や仕草も似てるかも……と期待したんだ。 それを確かめたくて、会いたくなったんだ。 それだけ、【アッキー】の存在は私の中で大きくなっていた。 【アッキー】が居るから渋谷にやって来たのに、その彼が何処に居るのかさえわからなくなると、心細く……急に不安になった。 でも、現実は【アッキー】と連絡がつかなくなった事で立ち止まるわけにも行かなくて。 1人で生きて行くと決めた以上は、悲しんでばかりも居られないのが実情だった。 だから、空虚な気持ちを抱えつつも、とにかく、仕事を見つけなきゃならないから、片っ端から面接を受けた。 けれど、成人した24歳だと言っても、名前も住所も偽り。 資格もなし。 身元を証明する為の車の免許さえ持ってない。 私がいくら誠実にお願いしても、身元保証としての履歴書に嘘を書き並べる人間は信用出来ないと、日中のバイトは尽く断られた。 意気揚々と私の人生は私の物だと大口を叩いて家出したのに、現実は、自分が思うほど価値のない人間なんだと思い知らされた。 【アッキー】が居てくれたら……。 【アッキー】と話がしたい……。 【アッキー】に……会いたい……。 縋るモノが何もなくて、ただただ無いものねだりのように想いが募って、心が折れそう……いや、折れた。 知らない土地でぽつんと立ち尽くすしかなくて、家出は間違っていたんじゃないか、と少しの後悔と大きな寂しさが、あっと言う間に挫折と言う言葉を紡いでいた。 かなり凹んだ。 人恋しかったのもあった。 その日も面接で落とされて、行く当ても無く、ただただボーッと御犬様の背中をベンチに座って眺めていた。 そして、そんな空虚で無気力な私に、ある男が声を掛けて来た。 ――「ねぇねぇ、今、時間ある?」
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