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【Act.16】
デートと称して呼び出され、その都度、新製品が入ったと使いもしないスキンケア用品を買ってた。
そうすれば、ケントが喜んでくれる。
私だけに笑顔を向けてくれる。
いつも以上に優しくしてくれる。
そして……求められたから……。
初めてのキス。
初めてのセックス。
雑誌や小説で見聞きしたような、甘くて幸せで、オンナに生まれて良かったと思うような行為だと思い描いていた。
彼となら……大丈夫だと、そう思った。
けれど……現実は……。
こんな……もんか……。
と……呆気なかった。
甘いムードなんて微塵も無くて、鼻の穴にバナナを突っ込むほど痛くて。
でも、彼はそんな私の【初めて】なんてお構いなしに、四つん這いにして腰をガシッと捕まえ、舌打ちしながら「つまんねぇなぁ……」と呟き、面倒そうに身体を揺すってた。
それは、愛なんて必要のない……本能だけの動物のような行為だった。
痛さを我慢して唇を噛み、顔を歪め、私の背後で舌打ちをする彼の……何が「つまんない」のかわからず。
私が悪いのかと、自問自答しながら、ただひたすらコトが済むのを待つだけだった。
そして、自己嫌悪。
だけど、会う度に求められたから、嫌われたわけじゃないと思ったし、私的には、触れられるだけで人並みにドキドキもした。
そして……知らなかった事も教わった。
本当は……見るのもグロくて、触る事にも抵抗があって、口に含むのも戸惑った。
けれど……それも一種の愛情表現だと受け入れた。
それでも、やっぱり……何処か、なにかが違ってて……。
一方的に押し付けられ、喉の奥を突くように抽挿され、咽返って歯を立てると「ヘタクソ」と罵声を浴びせられた。
それがトラウマになって、求められる事が次第に苦痛になり、身体も拒否反応を示すように濡れなくなった。
肌を合わせると親密度が増す、と何かで読んだけれど、私の場合は違ってたみたいで……。
肌を合わせるほど、距離が出来るような気がしていた。
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