Chapter.01 カモ

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【Act.18】 示談金詐欺。 反社会勢力の車だと言えば、一も二も無く、私は彼の為に、親に泣きついてでもお金を用意すると思ったらしい。 実際は、ケントが知り合いの男2人に持ちかけた芝居だったようで、目的は他にあった……。 事故現場じゃなく、粉雪の舞い散る人気の少ない公園に呼び出され、いかにもって感じの黒スーツにサングラス姿の男と、子分だと言わんばかりの背中に虎が雄たけびを上げてる絵柄が入った白ジャージの男が、ケントに罵声を浴びせてた。 その光景を目の当たりにした私は、怖いと思うより先に、何が何でもこの場の落としどころを早く見つけて切り抜けなきゃと思った。 極道さんとの揉めゴトは、一度だけじゃ済まないのを知ってるから。 示談金を支払ったとしても、それで終わりじゃない。 ムチウチになったとか、仕事が出来ないとか、借りた車だったとか、その後も何かにつけてお金を要求され、カモにされる。 そうならない為にも、私は、最善を尽くそうとした。 『てめぇ!【関東臣堂会 (かんとう じんどうかい)】の車にカマ掘ってんじゃねーぞっ! ふざけんなよ、こらっ! どう責任取るつもりじゃっ! 』 私が来たのを知ると、舎弟風のジャージ男がより一層声を張って怒鳴り出した。 この時点でおかしいと思えば良かった。 昭和の任侠映画さながらの看板をチラつかせての脅しなんて、暴力団対策法が施行されてる今じゃご法度だと、その世界に居る人間なら肝に命じているはずだから……。
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