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Chapter.01 カモ
【Act.01】
『私、妃奈子は、本日を以って、桐生の家と
絶縁いたします。
24年間、大切に育てて頂いてありがとうございました。
この御恩義に報いる事の出来ない非礼をお許しください』
私が親に宛てた手紙。
それは、復縁なんて望んでない絶縁状。
いつまでも、親の名前に縛られる人生なんて嫌なの。
私は、私の人生を歩きたい。
そして、親の名前に惹かれて寄って来る打算的な男じゃなく。
ましてや、親のエゴで決められた結婚相手じゃなく。
私の心を真っ直ぐ見てくれる人と恋がしたい。
だって、実らなかった初恋の切なさは知っていても、心から人を愛し、愛されるような恋は知らないから。
そんなオンナとしての悦びも幸せも知らず、好きでもない相手に嫁ぐなんて何の為に生きているのかわかんない。
だから、窮屈で退屈だった家も、隠然と鈍く輝く邪魔な名前も捨てる。
そう覚悟を決めて、家を飛び出したのは1年前。
名前のまんまのヒナが巣立った日。
大空に向かって大きく翼を広げ、誰の目も気にせず自由を手にしたと思った。
けれど、世間と言う広い空は、私が籠の中で見ていたものより遥かに厳しく甘くはなかった……。
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