Chapter.03 SDカードと睡眠薬

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【Act.09】 「これ、ケーコさんのお客さん? だと思うんですけど、ぽっちゃりとしたメガネを掛けた男性がケーコさんに渡して欲しいって」 「あ、あぁ……」 差し出したモノを見て、彼女の顔から笑顔が消えた。 「もぅまたぁ……眼鏡を掛けた太っちょくんでしょ? ヒナちゃん、ごめん、要らないから捨てて」 「えっ! 捨てるんですか?」 「どうせ、新世紀ナントカって言うゲーム? なんか、よくわかんないんだけど、そのキャラの画像の詰め合わせなんだもん」 新世紀ナントカの画像……。 私の脳裏には、彼のバッグに付いてた赤い髪のネコ耳の女の子が浮かんだ。 確かに、大好きなんだろうな……。 「いつものことで、話、わかんなくても相槌打ってたら、私も好きだって勘違いされちゃったみたいなの」 よくある話。 私たちは、カモちゃんに好きな話をさせて、警戒心を解いて貰うのが最優先。 だから、わからない話でも「うん、うん」と笑顔で頷いて、大袈裟に「すっごーい!」を連発したり、「えー! そーなのー!?」と無知な振りをしたりするの。 それがマニュアルだと知らず、純粋な彼らは喜んでくれるから……。 「そうですか……」 「怖いでしょ、推しキャラの画像なんて。 だから、要らないの」 と、興味が無いように、また、ディスプレイに目を落とす。 かと言って、汗をかきながら必死に訴えられた私としては、なんとなーく捨てるのも後味悪くて……。 それに、ことづけられたのはSDカードだけじゃない。 ――【SEVEN’s HEAVEN(セブンス・ヘブン)】で待ってる その言葉が頭の隅に、こびりついて離れない。 それは、私が思い入れのあるゲームだからかも知れない。 けれど、見過ごせずに気になってる。 そこが何処で何なのか……知りたい。
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