Chapter.03 SDカードと睡眠薬

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【Act.11】 けれど、探し物をするようにバッグを開いて立ち止まる。 「そーだ! ヒナちゃんに、コレあげる!」 クルッと振り返り、バックから取り出したものを私の目の前に翳して見せた。 それは、正方形の小さなパケ。 違法ドラッグを小分けして売る時に使うようなもの。 そのパケもそれに違わず、目と口だけで感情を表現する絵文字が刻印された5色の錠剤が、私の方を向いていた。 「何ですか、コレ?」 ラムネ菓子サイズで、ペールカラーの白、ピンク、ブルー、グリーン、オレンジの5色。 カラフルだけど、ただのお菓子ではないはず。 「睡眠薬」 得意げな顔をして言い切った彼女。 「睡眠薬?」 半信半疑にオウム返しに訊いた私。 この手のクスリと言えば、MDMA、通称・エクスタシーと呼ばれるモノが多い。 以前、ケントが持っているのを見たことがある。 あいつは、濡れず乱れず声も上げない私とのセックスが面白く無かったから、クスリの力で意識を飛ばして感度を上げようとしたの。 自分が満足したい為に使おうとしたから、私は断固拒否って、喧嘩になった。 そんな、苦い思い出もあってケーコさんがお菓子を渡すように気軽に言ったけど、さすがに「ありがとう」とは言えず。 そんな遠慮じゃなく躊躇した私の気持ちがわかったのか、 「知り合いのパーティーで、薬科大学生の超アタマのイイコと友達になったの! そしたら、その子が身を守る為にどーぞって」 いやいや……ちょっと、話がおかしくない? いくらパーティーで薬科大生がくれたからって、信用出来るほどのものじゃないでしょ? それに、身を守るためって、何から? ケーコさんがトラップガールだって事をその大学生は知っていて、この睡眠薬を渡したって事なの? ……話が怪し過ぎる。
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