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【Act.11】
けれど、探し物をするようにバッグを開いて立ち止まる。
「そーだ! ヒナちゃんに、コレあげる!」
クルッと振り返り、バックから取り出したものを私の目の前に翳して見せた。
それは、正方形の小さなパケ。
違法ドラッグを小分けして売る時に使うようなもの。
そのパケもそれに違わず、目と口だけで感情を表現する絵文字が刻印された5色の錠剤が、私の方を向いていた。
「何ですか、コレ?」
ラムネ菓子サイズで、ペールカラーの白、ピンク、ブルー、グリーン、オレンジの5色。
カラフルだけど、ただのお菓子ではないはず。
「睡眠薬」
得意げな顔をして言い切った彼女。
「睡眠薬?」
半信半疑にオウム返しに訊いた私。
この手のクスリと言えば、MDMA、通称・エクスタシーと呼ばれるモノが多い。
以前、ケントが持っているのを見たことがある。
あいつは、濡れず乱れず声も上げない私とのセックスが面白く無かったから、クスリの力で意識を飛ばして感度を上げようとしたの。
自分が満足したい為に使おうとしたから、私は断固拒否って、喧嘩になった。
そんな、苦い思い出もあってケーコさんがお菓子を渡すように気軽に言ったけど、さすがに「ありがとう」とは言えず。
そんな遠慮じゃなく躊躇した私の気持ちがわかったのか、
「知り合いのパーティーで、薬科大学生の超アタマのイイコと友達になったの! そしたら、その子が身を守る為にどーぞって」
いやいや……ちょっと、話がおかしくない?
いくらパーティーで薬科大生がくれたからって、信用出来るほどのものじゃないでしょ?
それに、身を守るためって、何から?
ケーコさんがトラップガールだって事をその大学生は知っていて、この睡眠薬を渡したって事なの?
……話が怪し過ぎる。
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