Chapter.01 カモ

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【Act.04】 「じ、じゃ、どうする? ご飯行く? それとも……」 「あっ、ご飯の前に少し寄りたい所あるんだけど……」 さて、本題だ。 「私が、お世話になってる人のお店がこの近くなのね。 今日、やっとコースケくんに会えるから嬉しいって話したら、連れておいでって言ってくれたの」 「お店?」 「ほら、私、関西から上京してフリーでモデルやってるって話したじゃない? 初めてモデルとして使ってくれたお店の人なんだ。 だから、コースケくんに紹介したいんだけど……ダメ?」 もちろん、ノーとは言わせない。 だから、ここでまた甘えた上目遣いを見せる。 「えっ? 僕を……紹介?」 歯切れの悪い言い方は、少し警戒した模様。 でも、この言葉を言えば安心する。 「親代わりみたいな人だから、何かと心配みたいで……」 「あ、そう……なんだ」 「そんなに時間は取らせないから、お店に寄った後、ご飯に行って……」 彼の腕にあった手をそのままスルスルと下ろして、手の甲を伝って指を絡めるように握った。 べっとりとした汗を感じる。 でも、今離せば、確実に逃げられそう。 だから……。 「お酒飲んで、楽しかったら……そのあとは……?」 絡めた指を握って、彼の耳に唇を近づけて囁くように言うと、私の言葉の先を読んだように「ごくっ」と、また喉を鳴らして頷いた。 「いいよ、いい! ヒナちゃんの親代わりの人に挨拶すればいいだけでしょ?」 案の定、「うん、わかった」と、鼻息荒く言われた。 「ほんと? 嬉しい!」 彼の笑顔に合わせるように、目尻を下げて頬を上げてみせた。 それと同時に、私の耳にはトラップゲージの閉まる音が聞こえた。 はいっ! 捕獲完了! 本日のカモが見事にネギを背負って、私と言うエサに喰い付いてくれました。 これで、今日の仕事は終わったも同然。 心の中でそうほくそ笑み、何も知らないカモの汗ばんだ手を引っ張って、雑踏の中を歩き出した。
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