Chapter.01 カモ

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【Act.05】 あれ、なんで? 『愛し愛されるような恋がしたい』と家を出たのに、マッチングアプリで出会った彼を『狩る』だの『カモ』だの『捕獲』だの、何を物騒な事を言ってるんだ? と、思ったでしょ? これは、マッチングアプリに理想の恋を求めたわけじゃなく、お仕事。 所謂、デート商法と言うもの。 出会い系アプリや街頭アンケートに答えて貰った男性をデートに誘って【お世話になった人のお店】と言っててるジュエリーショップに連れて行って、時計やリングなんかの貴金属を買わせるのが私の役目。 もちろん、恋愛感情なんて微塵も無く、立派な詐欺行為。 けれど、男と女の関係や感情なんて、おまわりさんにはわからないもの。 「ボトル入れてって言ってないのに、リシャール入れてくれた~♡」 なんて、高いお酒を何本も並べて動画を撮ってるお水のおねーさんなんてザラにいるでしょ? 好意でそうしてくれた事。 だから、『騙した』『騙された』なんて言う詐欺としての立証は難しいってことで、こんなグレーゾーンな職業が世の中には、まかり通ってる。 これが、1年前、意気揚々と大空に飛び立ったヒナの今。 真面目に働く所か、詐欺の片棒を担いでる。 この1年、世の中、綺麗な事よりも汚い事の方が多いと教わった。 信じるより、裏切られる事が多いと習った。 そして、誰しも自分が一番可愛くて、自分の身を守る事で精一杯。 私に高い授業料を支払わせ、それを勉強させてくれたのは、この街に来て初めて出会った……男からだった……。
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