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【Act.11】
「ねぇねぇ、もしかしてオレの事、キャッチとかスカウトみたいに思ってる?」
ひとしきり笑った後、目端に零れた涙を彼は太い人差し指を折り曲げて拭った。
その関節のゴツゴツしている指と共に目を引いたのが人差し指と中指の拳頭にあるタコ。
それは、喧嘩慣れしてる人間に見られるもの。
チャラい風貌や口調に似合わず、どんなにヘラヘラ笑ってみせても、その凄みをみせる鋭さは隠せない。
目は口ほどにモノを言う。
この仕事を紹介してくれたコバヤシさんが、まず最初に教えてくれた事。
『俺みたいな目をしてる人間には、間違っても声は掛けないように』
まんま、目の前の得体の知れないおにぃさんに当て嵌まる。
あの【SEVEN’s HEAVEN】のカードに載ってた写真……カラーなのに、色を成さない瞳のように見えた。
首を傾け、顎をクッと上げてカメラのレンズを見下げる感じが、写真を撮られることが気に入らないとばかりに文句を言っているようだった。
だから余計、目の前で人懐っこそうに笑った顔をみせる彼の目的がわからない。
こう言う冷やかしめいた同業者っぽいオトコは無視するのが一番なんだろうけど……。
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