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Chapter.05 カモのカモ
【Act.01】
あの得体の知れない綺麗顔のおにぃさんに、返事もせずに猛ダッシュした。
胸のドキドキも、雷に撃たれたようにカラダに電流が走ったのも、気のせい!
顔が良いだけのオトコに騙された過去を思い出せ!
ときめいてる場合じゃない!
私には、利息返済と言う大仕事が待ってんの!
「こ……こんっばんっはっ! コーぉっスケくんっ!」
御犬様前で待っていたカモちゃん・サクマコースケの腕に飛びついた。
「ヒナちゃんから、誘ってくれるなんて、超嬉しいんだけど!」
「ご……ごめんね、急に。 時間、作ってくれて、ありがとう」
呼吸を整えつつ、しっかりお仕事モードで上目遣いは忘れない。
「いいよ、いいよ、全然。 今夜は、期待しちゃっていいって事だよね?」
カモちゃんが私の耳元に唇を近づけて、鼻息荒くフーフーと息を吹きかけながら言うから、顔が歪む。
やめて……タバコ臭い息を吹きかけないでよ!
背中に悪寒……やだ、ゾワゾワする!
擽ったそうに肩を上げてみせると、それがツボったのか、小学生並みに悪ノリして執拗に息を吹きかけて来る。
もぉ……なんなのよぉっ!
面倒なオトコだなっ!
だけど……カモは、カモ。
「コースケくん、だめっ……だって!」
あー……あかん……笑顔が引き攣る。
今すぐにでもグーした手をタバコ臭い口に突っ込みたい。
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