Chapter.05 カモのカモ

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【Act.02】 「感度いいなぁ、ヒナちゃん♡ もっと、感じる顔見たいなぁ、あはは!」 あはは、じゃない! 見せないから! てか、舌舐めずりするの止めて! その、ぴちゃびちゃ言わせて唇舐めるの虫唾が走んの! だけど、そうも言ってられないから、話を合わすように私も笑って誤魔化した。 けれど……。 「早く天国イキたい?」 はぁっ? ナニ言ってんの? たぶん、カモじゃ無かったら、歪めた顔のまんま脛に一撃喰らわせて「ちかんだー!」て叫びながら一目散に走り出してる。 でも……でも、カモは……カモ。 そう言い利かせて、気を取り直して言う。 「いや……天国よりイキたいところ……」 ……ある。 手っ取り早くお店に連れて行く流れを作ろうとした私の背後で、声がした。 「オレなら、7回天国にイカせてやれっけど?」 7回……天国=【SEVEN’s HEAVEN(セブンス・ヘブン)】! 振り返るまでも無く、その声でわかった。 てか、いつから……そこに? 日本屈指の歓楽街の人波だから、一瞬、目を離せば見失うはず。 なのに、駆け出した私をぴったりマークして着いて来ちゃったの? 素知らぬ顔して辺りを見回し、背後を目端で捉えると、スマホに視線を落としながら、片手はポケットに突っ込んで、何やらニヤニヤしている綺麗顔のおにぃさん。 営業妨害する気満々でしょっ! だから、また、邪魔されると思った私は、デレて鼻の下を伸ばしてるカモちゃんを引っ張るように歩き出そうとしたんだけど……。
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