Chapter.05 カモのカモ

3/6
前へ
/89ページ
次へ
【Act.03】 人込みに紛れて、スクランブル交差点の方へと歩き出そうとしたその手を、カモちゃんに引っ張られた。 そして、そのまま向かい合うように、腰に両腕を回された。 「やっっ……? えっ? な、に?」 グイグイと下半身を押し付けられる。 な、なに……盛ってんの? それが我慢できず、回された手から逃れようとしたのに、不覚にもがっしりホールドされてる模様。 やばっ……。 と思うと同時に、それを察知したらしいカモちゃんが益々腕に力を入れて、下半身を私の太腿辺りに擦りつけて来る。 「ちょっ……コースケくん……」 困った声を上げた私を見て、カモが嬉しそうに目を細めた顔を見せる。 そして、身体を引き寄せられ、また鼻息荒く、今度は奇妙な事を言われた。 「あと2人、友達来るからさ」 えっ? 細めた目が横に伸び、薄っすらと笑われる。 「4人で楽しもうよ、ヒナちゃん」 その目を細めて私を見下ろす顔が、街灯の光を受けて陰影を作り出す。 二つの顔を見せるように、光が当たっている方は同じ調子の笑い顔に見えるのに、陰になった方は、ニタリと口角と目尻がつり上がったように見えた。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

64人が本棚に入れています
本棚に追加