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【Act.04】
明らかに、雰囲気が変わった。
そう思ったから、瞬時に笑顔を消して、その腕から逃れようと身を捩った。
けれど、余計に締め付けるように力を入れ、抵抗しても無駄だと言わんばかりに、耳朶を生暖かい感触で挟んで言われる。
「メッキの安物、30万で買ってやったんだから、楽しませろよ? あはは!」
言葉とは裏腹に蔑むようにバカ笑いする。
30万……私がこのオトコに買わせたペアリングの代金。
こいつ、もしかして……?!
ケーコさんの言ってた、騙された腹いせにトラップガールに仕返しするとか言ってたやつ……なんじゃ……?
ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ!
引き攣る顔でオトコを見上げると、2次元好きな仮面を取っ払ったかのように、太々しく私を見下ろして唇をペロペロと舐めてる。
もう、その妙に細くて長い舌が気持悪くて……。
その舌で何されるんだって思うと、怖すぎる!
それに、ケーコさんから聞いた話なんて眉唾だと思っていたのに、まさか、目の前のオトコがそうだったなんて考えると、仕事なんてやってられないでしょ!
― どんな事があっても、我が身が一番大事
この世界に身を置くと決めた時、コバヤシさんに言われたの!
そう……だから、既に私の正体を知って、カモのカモにしようとしている目の前のオトコは、私に取っては百害あって一利もない!
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