Chapter.05 カモのカモ

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【Act.05】 「離して!」 とにかく、この腕から逃れたい一心で言う。 「いいの? あんま騒いじゃうとお巡りさん来ちゃうよ?」 困るのはどっちだ? みたく、私の痛い所を突いて来る。 「僕の言う事、聞いといた方が、いいんじゃない?」 また、周りなんてお構いなしのバカップルのように、身体を密着させて、ペチャペチャと耳元で音を立てながら言うから、もう、堪らなくなって声を上げた。 「さ、さ、30万で、私が大人しく言う……言う事利くと思ってんの!」 この状況、ヤバいし、怖いけど! カモのカモになってたまるか! 「私は、買ってなんて、一言も言ってない! 勝手に、買ったのはあんた!」 そう、こう言うお水のおねえさんと同じ言い訳が、ちゃんと出来るようなマニュアルを店では教わるの! うちのお店は、経済ヤクザを絵にかいたようなオーナーらしく、犯罪に抵触するかしないかのクレーゾーンで商売してるから! だからこそ、コバヤシさんに紹介された時、こんな言い方は変なのかも知れないけど、ある意味【優良店】だったから、安心して……て言い方もおかしいけど、仕事しようと思った。 「だから! お巡りさんなんて、怖くな……」 ……いんだよ! と最後まで言い切るつもりだった。 それなのに、いきなり後ろから口を塞がれた。
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