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【Act.07】
ここで初めて【アッキー】が男の人だってわかった。
それと同時に、警戒するんじゃなく、寧ろ、男の人だとわかって、妙に心がザワついた。
私の話を根気良く聞いてくれる【アッキー】がどんな人なのか……興味が沸いた。
そして、好奇心を抑えられず、本気度を示したいと口実をつけて、直接通話したいとメッセージした。
でも、返って来たのは……
『チャットと違って、リアルは恥ずかしいから』
と、やんわりと断られた。
警戒されたのは、私の方かも……と、その文面にため息をついた矢先、滑り込むようにこんな言葉が送られて来た。
『【フレッジ】は、僕には大事な人だから、まだ、もう少し時間をください』
この真摯な言葉をどう受け取っていいのか、今度は私の方がわからなくなった。
けれど、少なからず彼にも抱えている何かがあるんだと察した。
それからは、【アッキー】の要領を得た行動によって、私の家出計画はスピードアップされた。
保証人なしで住めるマンスリーマンションを探してくれたり、正規のショップじゃなく名義貸しと呼ばれる人を介してスマホを買うように手配してくれたりした。
こんなにスムーズに事が運ぶのは、手慣れている証拠。
それが顕著に表れたのは、彼から授かった知恵の1つに、お金の動きが一番足が付きやすいと言われた事。
その辺の事情は、私の初恋の人も言ってたから……もしかして【アッキー】は彼と同業者じゃないのかと思ったりもした。
そう勝手に想い込む事で、ますます親近感を持ってしまった。
それでも、目先の事をクリアしないと【アッキー】にも会えないから、彼の指示に従って、学生の頃、ゲーム感覚で始め、使うあての無かった株の利ざやを逃亡資金として自分の口座から1ヶ月をかけて少しずつ現金化して手元に置いた。
そして、つつがなく用意周到に計画は実行され、親にバレずに上京する事が出来た。
全ては【アッキー】の指南通り。
あとは、自分に合った仕事を見つけて、新生活を始めるだけだった。
でも、その前にやっぱり【アッキー】に会いたいと思う気持ちは抑えられず。
上京して、同じ渋谷の空の下に居ると思うだけで、ドキドキしていた。
だから、私的には機は熟した感があって、もう我慢できずにメッセージを送った。
『お礼がしたいから、ご飯に行きませんか?』
けれど……
その返事が返ってくる事は
無かった。
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