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奏と巧兄弟には、母がいない。
弟の巧が小学校を卒業した時、おばあちゃんは突然「孫守り引退宣言」をした。
そしておばあちゃんの代わりに、ごはんねこがごはんをつくってくれることになった。
「「「ごはんねこって何?」」」
驚愕してそう聞いた三人の父子(おばあちゃんから見ると息子と孫)に、おばあちゃんは次のような雑誌の切り抜きを置いて行った。
それがこの文献である。
ミネス・トローネ氏「ごはんねことは一体何者なのか!?」
https://estar.jp/novels/25789194 (安積みかん様著)
・・・・・・
ごはんねこがうちにやってくると聞いて、ミネス・トローネ氏のインタビュー記事を読んだ巧が一番やってみたいのは、変な質問でねこの頭をオーバーヒートさせて、頭から湯気を出させることだった。
だが、父にはもちろん、そんなことは秘密にしている。
今日は初めて、ごはんねこがやってくる日だ。
六時ちょうど、ピンポーンとインターフォンの音がする。
画面を覗くと、エプロンをつけた白い何かがそこに二本足で立っている。
「「はーい!」」
留守番していた巧と、兄の奏はそろってバタバタと玄関に走っていき、ドアを開けた。
「「こんにちは。ごはんねこさんですか?」」
「こんばんは。はい、ねこはごはんねこです。ごはんをつくるためにきました」
予想通りの返事だ。
「「どうぞ」」
ごはんねこは玄関に入ると、持参したウェットティッシュで足の裏を丁寧に拭く。
それからどうするのだろうと思っていたら、じっと立ったままだ。
「……あのう。どうぞ」
奏がごみ箱をそっと差し出す。すると、ごはんねこは何事もなかったようにウェットティッシュを奏に渡して、台所へ向かった。
奏は、受け取ったウェットティッシュを捨てる。
ごはんねこは、「すてるねこ」ではない、ということなのだろう。
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