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父は自分で鍵を開けて入ってくる。
「げ。お父さん。なんで早いの?」
「気になって、帰ってきちゃった。なんだ、このにおい?」
「……えーと。ラザニアが焦げてるのかな?」
焦げ臭さをごまかすために、巧は言った。
「そんなにおいか?」
と、父は首をかしげている。
実際は、オーブンはタイマーセットされているので、ラザニアが焦げているのでないことは、巧にもわかっている。
さっき、エラー状態だったねこの焦げ臭さが残っているのだ。
「なんで、ねこから湯気が出てるの?」
父の質問に、ねこが答えた。
「ねこは かしつきねこです。あたまから ゆげをだして おへやをかしつします。おみずが すくないので、たしてください」
「なんでそんなのに変えちゃったんだよ?」
巧が目をそらす。
「それはー……」
奏がかいつまんで事情を話すと、父はがっくり肩を落とした。
「何がしたいの、君は」
巧は父からさんざん𠮟られた。
しかし結局のところ、ねこを壊して何がしたかったのか、それは未だ巧にも不明のままである。
(終)
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