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はくじょうなし
「うわあぁぁぁ! もう! うわぁ! もう、もう……うわあぁぁぁぁ!! もう!!」
「うるさいな! ……静かにしてくださいよ。非常識な人だな」
「いや、お化け屋敷で静かにしてるほうが非常識だろ」
「にしても限度があるでしょ。それでよく一人で行こうとしたなアンタ……」
「クソッ、こんなことならミッドサマー観に行けば良かった」
「やめとけ! アンタはやめとけ!!」
「もう帰りたい……。なんでこんなとこ来たんだろ」
「ほんとだよ。帰れよ。こんなとこ来るべきじゃないだろアンタ」
「だってなんか、外騒がしいし。静かな場所に行きたくて……」
「なおさら家に帰れよ」
「……もう吐きそうだわ。ほんと今日は厄日だよ。手ヌメヌメするし」
「洗えよ」
「多少汚くても暗がりだから平気かなって」
「外でたらまだ真昼間ですけどね」
「……おっ、次が最後っぽいぞ」
「おお、頑張ったじゃないですか。この通路を渡りきれば帰れますよ!」
「よっしゃ……ふぅ……ふぅ……来るなよ……来るなよ……来たか?……来るなよ……ふぅ……ふぅー……うおおおぉぉぉぉぉ!!!! きゃあぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「だからうるせぇよ!! まだ来てない、来てないから。役者さんまだスタンバイの際中だから! ああ、むしろさっきの悲鳴で逃げてる、めっちゃ役者さん逃げてるよ」
「……ハァハァ……うるせぇ……アンタに何が分かる。いいか、暗闇の中で人が吠えるのは本能なんだよ……。イルカだって声を反射させて物体を確認するじゃねぇか、それと一緒だよ。本能が障害物を探してんだ、俺の……俺の本能が頭が可笑しい人間を演じろって……ピエロになれって囁いてんだ……だってそうだろ。俺は可笑しい人間だからちょっとでも変なことしたら刺すぜって知らせるために、俺は奇声を上げんだよ……」
「さっきからずっと何言ってんのコイツ。ほら、頑張れ。出口付近にいる奴が飛び出したら終わりだから。それ我慢したら帰れるぞ」
「すげぇ詳しいじゃん。めっちゃ通じゃねーかよぉ。お前が行ってくんない? 先頭……」
「アンタが先頭じゃないと意味ないんだよ!」
「なんだよそれ。つか、今更なんだけど……」
「お前誰?」
「…………」
「え、うそ……うそでしょ……まさか、おばーー」
「いえ、警察です」
「警察?!」
「藤田マサキ、殺人罪で現行犯逮捕!」
出口から無数の警官が駆け寄って来た。取り押さえられた俺は、本当の意味で目の前が真っ暗になった。
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