ありがとう

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8月29日 深夜、家に帰ったオレは何をするでもなく床に突っ伏して放心していた。 数日前までオレはどうやって高校生活を送ってたんだっけ… どうやってこのボロアパートで生活してたんだっけ… 部屋の隅にあるパンダのぬいぐるみが目についた 記憶がなかったオレの数少ない心の支え… 思わず手繰り寄せて抱きしめる ここ数日で色々起こりすぎた 記憶… 全部ではないけど殆ど思い出した それはずっとずっとオレが願っていたこと 今年の七夕の時、まるみ屋さんの短冊には暁斗のこともあるから結局書かなかったけど、ずっと心の中で願い続けてきた… それがこんなにもあっさり叶ってしまうとは思ってもみなかった オレは明人を殺してタマキも殺そうとした 刺した理由はまだはっきりとは思い出せないけど、 現実はいざ思い出してみると最悪なものだった そして詳しいことはわからないけど、オレは気が付かないうちに麻薬にまでも手を出してしまったらしい この状況で今まで通り高校生活送れって方が難しい それでも… また必要としてもらえるなら オレは ガチャ オレの思考を遮るように玄関からドアの開く音 「…ナオヤ?」 ー“暁斗” パシリくんでオレのニセモノの弟 そしてこんなオレの被害者 「ナオヤ!!今までどこに行ってたんだよ…!!」 叫びながらも律儀にしっかり靴を脱いで部屋に上がってくる まぁそれが普通なんだけど ダルい気持ちを誤魔化して突っ伏していた体制からゆっくり身体を起こす 「暁斗、心配かけさせてごめんね?」 いつも通り笑えてるかな 「…ナオヤ、どこに行ってた…?!てか、鍵空きっぱなしだし。」 「うーん、ちょっと現実逃避しに…?」 めちゃくちゃ苦しい言い訳だなと我ながらに思う でもこれ以上は聞いてほしくない気持ちを込めて暁斗から目を逸らす 「…もしかして記憶が戻った…とかじゃないの?」 「記憶は…」 絶対聞かれるとは思った でも暁斗にはバレないようにしないといけない 今まで通り記憶のない振りを続けて今まで通りシキコーに通う タマキから言われたこと 守らないと 「それが全然」 今までオレの側にいてくれた暁斗に嘘をつくみたいで少し罪悪感 「残念だけど」 「…そっか」 暁斗の少し安心した表情 暁斗もオレに記憶が戻って欲しくないのかな? なんでだろう 前に暁斗はオレの命を守るためって言っていた それってもしかしてSMOKILLのことなのかな オレがタマキを殺して チームを壊したから そいつらが返り討ちにくるって そう思ってるのかな それならチームは実際壊れてなかったし タマキは生きていた そのことを暁斗は知らないのか? そもそも暁斗はチームから抜けたの? それならもう大丈夫だって教えてあげたいし、聞きたいことも沢山ある 暁斗はなんでオレにここまでしてくれるんだろう 「…はぁ、今度はどこか行く前にちゃんと連絡しろよ。あと鍵も忘れずに。」 深く追求してこない 元々暁斗は必要以上に距離を詰めてこない それに対して弟のくせにとか不満に思っていた頃もあったけど 実際は本当の弟じゃなかったからだって今なら納得出来る 「はーい」 暁斗とは離れないといけない 今まで本当にありがとう そしてごめん 心の中でそっと感謝と謝罪を伝えた
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