1/1
前へ
/3ページ
次へ

9月4日 薬の副作用なのか何もする気になれなくて 気がつけば9月になっていた あぁそういえばと 充電が切れたままだったスマホを充電して電源を入れた 電源が入った途端物凄い数の通知 その大半は暁斗からのものだったけど、 中にはシキコー2年の皆からの心配するDMまで来ていてびっくりした 意外とオレ、学校に溶け込めてたんだなぁ 改めてシキコーはオレの居場所だった ちょっと嬉しかったのと 申し訳ない気持ち とりあえず一人一人に返事を打つ 心配かけてごめんということと、 感謝の気持ち、そして無事だということを手短に送った なんか、学校行きずらいなぁ 高校は夏休みも明けてるし どのタイミングでどの面下げて行こうか そんなことを考えていた時にDMの通知がきた 春輝からだった 同じクラスの鷹左右春輝 春輝は良い奴 あまり話したことがないオレのことですら2年でなにかやる時には声をかけてくれたり、オレが料理で唯一作れるハンバーグを作ってたら食べたいって言ってくれたり、、、 ふと今までのことを思い出して つい最近のことなのに凄く懐かしく感じた DMには春輝も学校に行けていないこと 月曜から学校に行くから一緒ならバイクに乗せていってくれること 夏休み遊べてない分どこかに遊びにいこうという内容が書かれていた サボり仲間がいて少し安心した 学校に行くタイミングを見失っていたからお言葉に甘えて春輝と一緒に登校することにした そしてついでに金曜日に海に行く約束も… 高校生活を今まで通りに送るのにはちょうどいい機会かもしれないと思った 9月7日 月曜日 タマキに今日から学校に行くことを伝えて、オレは久しぶりに登校した 久しぶりに登校したからと言って特になにかを追求されることもなく、気がつけば下校時間 元々勉強が苦手なオレは久しぶりに頭を使って思った以上に疲れていた こんなんで今まで通りなんて出来るのかな こうなるとサボれる金曜日が待ち遠しくなってきた それからは毎日頑張って学校に行って なんとか前までの感覚が戻ってきた パン屋のバイトも数日無断欠勤したことを謝罪してなんとか復帰させてもらった そして春輝と約束した金曜日 9月11日 約束していた通り 待ち合わせ場所に春輝がバイクで迎えに来た メットを渡されて後ろに乗る 海は遠巻きに見たことはあるけど、実際に行くのは初めてだから少し楽しみだったりする バイクに乗って 海に向かって凄い速度で進んでいく 見慣れた街から離れて流れていく景色を見ていると現実から切り離されていく感覚がした 暫くして海に到着した こんなに間近で見るのは初めてだったから波の音、潮の匂い、永遠に続いてるような海の大きさに圧倒された 「…凄い」 「9月だからちょっと海水冷たいけど、晴れて良かったな〜 ナオヤって海あんまり来ないの?」 「遠巻きには見たことあるけど実際に来たのは今日が初めてかな〜!波とか凄いね!」 「弟くんとは来ないの?」 「弟は、オレが遠出とかしたら心配するからなぁ。今はもう大丈夫だけど!」 春輝の言う弟とは暁斗のこと 暁斗はオレが命を狙われてるって思ってたから、今まではなるべく遠出とかは避けた方がいいって言われてたんだよなぁ。 それももう大丈夫だけど。 「弟くん結構心配性?普通は逆っぽいけどな」 春輝は笑っていた それから砂浜を歩いて 海に近づくと海水が来たり戻ったり、 波が意志を持ってるのかってくらい思ったよりも不規則に動くからびっくりした ここまでは来ないと思っていたらさっきよりも海水が押し寄せてきて一気に足元を浸食される 「冷た!」 春輝が海水の冷たさに声をあげた 確かに冷たいけど、なんか 楽しい…! 足だけじゃなくてもっと奥まで入りたいと思った この海はどこまで続いてるんだろう 「夏になったら海に入れる?」 「入れるよ。サーフィンとか出来るしめっちゃ楽しいよ!」 サーフィン… 春輝似合いそう それから暫く春輝と砂浜を歩いたり足首が浸かるくらいまで海に入ったり、砂浜に座って海を眺めて時間を過した なんで今まで知らなかったんだろう オレは空に浮かぶ月や星が好きだった 綺麗だし、それを見ているとなんだか心が落ち着くから子供の時からしょっちゅう夜になると空を見上げてた まさか空以外にもこんなに綺麗なところがあったなんて そこでふと思った タマキは海を見たことあるのかな タマキにもこの綺麗な場所を見せてあげたい タマキのことを考えると急に現実に戻される その途端、綺麗なこの場所と今の自分が凄く対照的に思えて不安になる このまま潜れば海が綺麗にしてくれたりしないかな 益々海に入りたくなった チラッと春輝を横目に見ると春輝も海を見ていた 今まで見たことないくらい真剣な表情をしていて一瞬びっくりする 春輝も、何か抱え込んでたりするのかな 前に不眠症とかって言ってたっけ 俺と一緒で学校にも行けてなかったらしいし 記憶がない頃のオレは気が付かなかったけど、今思えば春輝って1番よく分からない奴だよなぁと思う いつも優しさの裏では何を考えていたんだろう そんなことを考えてたらオレの視線に気がついた春輝がこちらを見て笑う 「そろそろ帰ろっか。」 「…!うん。そうだね」 急に目が合ってさっきの表情が嘘のように笑うからドキッとした オレ絶対変な顔してただろうな …恥ず 来る時と同じように春輝のバイクの後ろに乗って帰る 海が夕陽に照らされてるのがまた綺麗だった 帰りは来る時よりもあっという間で気がついたら家だった 海また行きたいな そう思いながら春輝にメットを返す 「今度は弟くんも一緒に来れたらいいんじゃない?」 暁斗も一緒に、、、 「そうだね!暁斗もあんなに綺麗な海見れたら絶対喜ぶと思うな〜!」 その頃、オレの弟やってるかな… 「今日はありがとう。来年は海に入れたらいいなぁ」 来年のことは全く分からないけど… もしまだこうやって遊んだりしてたら海、入りたいし、サーフィンもやってみたいなぁなんて思ってそう言った 「来年かぁ…俺が学校に居なくても遊んでくれる…?」 春輝の声のトーンがさっきよりも下がって静かにそう言った それなのに表情はいつもと変わらない …春輝? やっぱり何かあるんだな… 「春… 〜♪ オレが話そうとした時、 それまで全く鳴らなかったオレのスマホが鳴り出した 着信はタマキからだった 「ちょっとごめん!」 話してる途中だったのに… 「あぁ、いいよ!俺、これで帰るから!んじゃ、またね。」 「…あ!」 オレが止める間もなく春輝はバイクのエンジンをかけてあっという間に帰ってしまった なんか大事な話みたいだったのに 今度学校で会ったら謝ろう でもあの質問、オレはなんて答えてたんだろう 来年のことを約束出来ないのはオレも同じなのに… ずっと鳴り響く着信音 自分の部屋に続く階段を登りながら応答ボタンを押した
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加