薔薇は咲く ※

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「・・仁斗、勝手にあんな約束してお前大丈夫なんだろうな?」 帰り道の途中、純輝が尋ねたが仁斗が片眉を上げただけで何も答えないので、純輝は大きく溜息をこぼす。 「あんなド変態みてぇな奴だけど、喧嘩だけは強ぇからなぁ・・仁斗、負けるかもね」 朝陽が呑気に ’にゃはは’ と笑うと、一徳もそんな朝陽を心配そうに見た。 「中学ん時、後一歩だったって・・ヤバかったのか?」 「ヤバかねぇよ、盛ってる、盛ってる。ベロチューされたから玉蹴り上げたら・・」 朝陽が思い出してブフッと笑うと、3人は ’ベロチュー’ のワードに訝しんだ視線を向けたが、 「あいつ、それでイっちゃったの・・グフッ・・超早漏・・アハハ!」 続きの言葉に腹を抱えて笑った。ひとしきり皆で笑うと、朝陽は先程までと全く同じ笑顔を浮かべ、 「仁斗、俺犬が欲しいんだよね」 そう言った。 マンションの一室、ここは仁斗がセカンドハウスにしている部屋だ。自宅は人の出入りが多く、それが嫌で仁斗はもっぱらこの部屋に入り浸っている。ここへ来ると日常から開放された様な気がしてホッとするが、今日ばかりは違う。テレビの中の笑い声が場違いの様に部屋に響いている中、仁斗は携帯の画面を睨んでいた。 「ねぇ、まだ?」 「もうちょっと待て!今グー○ル先生に教えてもらってっから・・」 携帯から視線を外さない仁斗に、その隣にいる朝陽がソファに寝転んで丸くなる。白いTシャツにボクサーパンツ・・。小さな形のいい尻に視線がいくと仁斗はゴクリと喉を上下させた。 朝陽が突拍子もない事を言い出すのはいつもの事だが、今日は過去一だ。なんせその突拍子のなさで、2人は今からセックスをしようとしているのだから・・。 「は?犬?・・何、突然」 朝陽の言葉に仁斗が目を丸くすると 「俺、柄谷を犬にしようと思ってさ」 朝陽は可愛らしい笑顔を称えたまま、とんでもない事をサラリと言ってのける。仁斗はクラリと目眩を感じた。 「・・・どうやって?」 「明日、仁斗は何が何でも柄谷に勝ってよ。そんで負けた柄谷にこう言うんだ ’朝陽を抱かせてやる’ って」 「はぁ!?バッカじゃねぇの!言わねぇよ、んな事!」 「言え」 朝陽の顔から笑顔が消え、低い声が響くと純輝と一徳はゴクリと喉を鳴らした。これは朝陽が本気である事を示す合図だ。その合図で朝陽が冗談を言っている訳でも、からかっている訳でもない事が分かると、仁斗は大きく息を吐いた。 「何で?理由は?」 「これは卒業後の模擬戦だって言っただろ?もしこれが上手くいけば、俺は最強のボディーガードを手に入れる事が出来るし、柄谷が跡目を継いだ時は柄谷組が千龍会に流れるかもしれない。それに、柄谷が俺の犬になれば遊佐はきっと俺達の陣門に降る」 この説明をイチ早く理解したのは純輝だ。 「柄谷がお前を自分の女にしたがってるのを利用するって訳か?」 「そういう事」 話の早い純輝に朝陽がニヤリと笑うと、まだ理解が追いついていない2人に純輝は分かりやすく話し出した。 「今日の柄谷や遊佐の様子を見ても、アイツ等が朝陽をそういう目で見てたのが分かんだろ?」 コクリ、2人が頷く。 「明日仁斗が柄谷を倒せば、柄谷は朝陽を手に入れる事が出来なくなる。だから言うんだ ’俺達の派閥に入るなら朝陽を抱かせてやってもいい’ ってな。柄谷は尻尾振って話に乗る。朝陽の家と柄谷の家は近いから、朝陽は柄谷に守られながら学校へ通う事が出来る、これは学校の外でハバを効かせてる遊佐対策だ。ここまでは分かったか?」 ― コクリ 「遊佐は状況を分析するだろうな、仁斗が最も大切にしている朝陽には手が出せない。その上、自分が1年掛けても倒せなかった柄谷が俺達に付けば3年に勝目はなくなる。俺達は無駄に暴れなくても頂点に立つ事が出来るって訳だ」 ’おぉ!’ と納得の声を上げる一徳に対し、仁斗はしかめっ面だ。 「お前はいいのかよ・・柄谷なんかに突っ込まれても・・」 「女じゃねぇんだから、誰に突っ込まれても傷つきゃしねぇよ。でもさ、俺まだ男とやった事ないんだよね・・だから、仁斗ちょっと練習台になってよ」 ’買い物行くから付き合ってよ’ くらいの軽さで2人は今の状況にある。 ならばせめて気持ちよくさせてやりたいと、仁斗は先程から男同士の営みを勉強中なのだ。 「仁斗が無理そうなら、純輝に頼むけど」 痺れを切らせた朝陽が体を起こすと、仁斗は慌てて携帯を握ったまま朝陽を体で押さえ込む。仁斗の下で ’グエッ’ と蛙が潰れた様な声を上げた朝陽に、 ’色気ねぇなぁ’ と心の声が漏れた。 「色気ねぇ・・」 スルリと朝陽の手が仁斗の背を撫でると、仁斗はブルリと体を震わせ、スラリと長い脚が仁斗の体を挟み込み、朝陽は仁斗の首に腕を回すとその体を引き寄せた。 「もういいから・・やろう?」 耳元で艶っぽく囁かれるとゾクゾクとした感覚が這い上がり、仁斗の欲情に火を付ける。 「~~~っ!もう知らねぇかんな!」 人の気も知らないでと、携帯を放り出した仁斗に、朝陽は綺麗な顔で笑った。娼婦と天使の顔を合わせ持つ朝陽に抗える奴などいるのだろうか、そう思いながら閉じ込めた腕の中で朝陽の髪に触れる。頬を滑り顎を掴むと仁斗は改めて朝陽の顔の小ささに驚いた。天然で艶めく唇は綺麗なピンクに色付いていて引き寄せられる様に唇を重ねると、その気持ち良さに夢中になる。噛み付く様に貪ると、Tシャツの中へ手を這わせ、くすぐったかったのか朝陽の体がビクリと跳ね唇が薄く開くと仁斗はすかさず舌を差し入れた。薄っぺらい朝陽の舌を丹念に舐め回し、素肌を撫でていた手は胸の飾りに触れる。 「んぅっ」 小さな乳首を指先で転がす様に触れれば、朝陽は仁斗の胸を押して僅かに体を離した。 「女じゃねぇんだから、そんな事しなくていいじゃん」 「誘ったの、お前な。黙ってやられとけ」
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