薔薇は咲く ※

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Tシャツをたくし上げ朝陽の素肌を晒すと、仁斗はその美しさに息を飲んだ。きめ細かい褐色の肌に綺麗に割れた腹筋、胸筋は女と違い豊かな膨らみがないにも関わらず、その頂きはいらやしく色付いている。そして何よりも仁斗の目を引いたのはくびれた細い腰だ。決して女っぽい訳ではない朝陽を、中性的に見せているのはこの華奢な骨格のせいなのだろう。これまで何度も朝陽に劣情を抱いた事はあるが、行動に移した事はない。 抱くなら女がいいに決まっている。たわわな胸に柔らかい肌。遊ぶだけの女なら掃いて捨てる程いるが、仁斗の心はいつも冷静だった。 だが、今の自分はどうだ。目の前の男を喰らい尽くしたくて堪らない。 あの細腰を掴み揺さぶっている所を想像しただけで下腹部は主張を始め、着ているスエットを押し上げている。 自分だけがこんなバカみたいに興奮しているのだろうか。朝陽は何の感慨もなく事を終わらせて ’じゃあね’ と手を振りながら帰って行くだろうと思えばドス黒い感情が湧いて来る。 一生忘れられない様な傷を刻み込んでやりたいと思った。ドロドロに溶かして、甘やかして、初めての快感にグズグズになってしまえばいい。 だが、男とセックスするという事に、この男がどこまで耐えられるのか・・。 もしかしたら今まで見た事がない朝陽の泣き顔が見れるのではないかと、仁斗の心は少しばかり愉快になって来た。いつも自分を振り回している朝陽を、今度は自分が振り回すのだと思えば気分もいい。仁斗はニヤリと笑うと、朝陽の手を取って体を起こした。 「ベッド行こうぜ」 寝室に入るなり服を脱ぎ捨てた仁斗に、朝陽が既に勃ち上がっている仁斗の股間に視線を投げると、  ’エグッ!’ と目を丸くする。 ベッドの上に座る朝陽に近付き、Tシャツを脱がせると朝陽の漆黒の瞳が僅かに揺れた。 「止める?止めるなら今だけど?」 体を押し倒しながら言えば、朝陽は口を結んで首を振った。その強情さが仁斗の加虐心をくすぐり、仁斗はペロリと朝陽の唇を舐める。 先程よりもじっくりと朝陽の口内を堪能し、上顎を舌で摩ってやれば ’クゥ’ と犬の様に鳴く。手に吸い付く肌を撫で、胸の頂きを指の腹で刺激すれば突起はプックリと立ち上がり、仁斗は唇を離すとその突起を口に含む。しつこい程に両方を刺激してやれば、始めはむずがっていた朝陽も段々とその吐息に熱がこもって来ているのが分かった。 「も・・そこばっか・・止めろって」 「気持ちよくない?」 ピンっと先端を爪で弾くと、朝陽の体はピクリ跳ねる。それに気を良くして、手を朝陽の下腹部に伸ばすと、 ’アッ’ と小さな声が上がった。 流石に羞恥心が勝ったのか体を丸めた朝陽の耳が赤く色付いている事に気付くと、仁斗はその耳を喰んだ。 「朝陽、もう止める?」 握り込んだ手を上下にゆるりと動かしながら囁けば、朝陽は眉根を寄せて潤ませた瞳で仁斗を見上げる。 「仁斗、ヤバい・・んっ・・きもち・・」 朝陽の半開きになった唇から赤い舌が見えると仁斗は自分の中の凶暴なまでの情欲がせり上がって上下する手を早めた。 泣かせたい・・優しくしたい・・滅茶苦茶に抱き潰したい・・誰よりも大事にしたい・・。 相反する気持ちが交互にやってきて、もう頭は沸騰しそうだ。喉元を反らし快感に打ち震える朝陽に深く口付けると、呼吸を奪われた朝陽が仁斗の背を叩いたが、仁斗は唇を離す事も手を止める事もしなかった。 「ん~~~~っ!」 朝陽の内腿が大きく震えると仁斗の手に温かさが広がる。 「イった?」 ようやく離された口で懸命に酸素を取り込んでいる朝陽の頬を撫でれば、朝陽はその手にガブリと噛み付いた。 「痛ってぇ!コラ、朝陽!」 甘噛みなんて可愛いレベルではない痛みに、仁斗が朝陽の顎を掴み上げると、涙目になっている朝陽と目が合って思わず笑みが溢れた。 「死ぬかと思ったし!お前の舌、噛みちぎってやろうかと思った」 ’猛獣か、お前は’ と、笑いを噛み殺し額に唇を落とすと、朝陽が目を丸くして、次の瞬間顔を顰めた。 「・・俺、女じゃねぇけど」 「知ってるけど?」 「・・あ、そう・・」 唇をムニムニと動かして何か言いたげな朝陽をよそに、仁斗は体を離すとサイドボードに用意しておいたローションを手に取る。手でそれを引き伸ばし、朝陽の秘部へ塗り込む様に指を這わせると、朝陽は複雑な表情を浮かべながらジッとしていた。滅多に揺らぐ事のない朝陽の瞳が不安そうに揺れると、指を差し入れながら仁斗は思っていた事を口にした。 「何でこんな方法なの?お前が体張らなくてもいいだろ?」 「・・・それ人のケツ弄りながらする話?」 ’確かに’ と思いクスクス笑いながらも指は円を描き広げる動きを止めないでいると、朝陽はか細い息を吐きながら仁斗を真正面から見詰めた。 「仁斗、今日みたいな事・・もうすんな」 「今日みたいな事って?」 増やされる指に朝陽の眉根が苦しげに寄せられると、仁斗は意識を別に向ける様に胸に舌を這わせる。 「アッ・・必要以上に・・ん・・俺を守ろうとすんな・・」 そんな場面あったか?と自分の無意識の行動を咎められ、仁斗は首を傾げた。そんな仁斗の頭を抱え込む様に朝陽がギュッと抱き寄せる。 「奴等が・・俺を欲しがるなら・・くれてやれ・・それを利用しろ・・んっ・・ハァ・・俺の価値を上げるのも・・下げるのもお前次第だ」 純輝ならば朝陽の言葉の意味をイチ早く理解するのだろうが、仁斗にはそれは難しかった。いや、頭では分かっている。ただ感情が邪魔をするだけだ。誰にも触らせたくないし、誰にも手折られたくない俺の花。 だが朝陽は自分の腕に大人しくおさまっている切花とは違う。誰もが美しいと手を伸ばさずにはいられない花を、仁斗はほんの少し分け与えてやればいい。分け与えられた者はもっと欲しがり、与えられない者は自分にもくれと渇望する。高嶺の花にする事で朝陽の価値は更に上がるだろう。 「・・女王様かよ」 「俺だっていつも勝てる訳じゃねぇ・・そん時に・・んぅ・・危なくなるのはお前だ・・アッ、バカ!・・あ・・あぁっ!」 朝陽の体が大きく跳ね、仁斗はやっと見つけた朝陽の弱い所にニヤリと笑った。強弱をつけながらそこを擦り上げると、朝陽は断続的に嬌声を上げ、腰は逃げる様にずり上がっていく。浮き上がる腰に腕を差し込み引き寄せると朝陽は与えられる快感をどうにか逃がそうと枕をギュッと掴んだ。 「ここ、朝陽の弱いとこ・・気持ちいい?」 仁斗がわざと意地悪く囁いた言葉に、朝陽が素直にコクコクと頷くと、猛烈に愛しさが胸を占めて仁斗は力なく朝陽の胸に顔を寄せた。指を引き抜く仁斗に朝陽が首を傾げ 「仁斗?」 と不安げな声を出すと、仁斗は力一杯朝陽を抱き締める。 「やっぱ止めようぜ・・お前を誰にも触らせたくない」 自分で思っていたよりも声が揺れて、情けねぇなと心で舌打ちすると、 「まだそんな事言ってんのかよ」 朝陽の手が優しく仁斗の背を撫でる。 「こんなのは序の口だ・・組に入ったらもっと陰湿だぞ・・俺がお前の側に居たいと思ってるかぎり、俺はお前の弱みになる。弱みを見せたらそこを攻めるのは極道なら当たり前だ。何て事ない・・そういう顔してろ。俺はもう腹括ってんだ・・お前も腹括れ」 朝陽は ’今’ を考えているんじゃない。既に ’未来’ を考えているのだ。そして自分と一緒にいる為に体を張ると・・。 ならば自分のすべき事は1つではないか。 誰よりも高く昇り詰める・・ 俺の花を守る為に。 「朝陽、お前俺が跡目を継ぐまで墨入れんなよ」 仁斗は朝陽の右脇腹から首元までゆっくりと手を這わせ、唇を重ねた。 「痛い?」 先端を埋め込むと、散々弱い所を責められた朝陽は弱々しく首を振る。 「痛くねぇ・・けど、苦しい」 朝陽の様子を気にしながら少しずつ少しずつ埋めて行く。こんなに気を使ったセックスなどした事がないなと、仁斗は小さく笑った。時間を掛けて埋め込み、仁斗の恥骨が朝陽の尻に当たると、仁斗は朝陽の顔を両手で包み額を合わせた。 「全部入った」 「うん・・腹一杯だわ」 ’仁斗のここまで入ってる’ と腹を摩る朝陽に、仁斗は勘弁してくれと叫びそうになった。こっちはガンガンに突きたいのを我慢しているというのに、朝陽は無意識に煽ってくるから堪らない。 「もう動くぞ」 「ん・・動いて・・アッ、あ、ヤバっ・・」 愛しい・・可愛い・・。 嬌声を上げ仁斗にしがみつく朝陽をかき抱くと仁斗は一気にストロークを大きくした。 「ふぁ・・ア、そこヤバ・・あぁっ」 ローションがパチュパチュと水音を立て、包み込む朝陽の肉壁が蠢く様に仁斗を刺激する。 「すげぇ気持ちいい・・朝陽、こっち見て」 口元に手の甲を押し当てた朝陽が仁斗を見ると仁斗は朝陽の手をシーツに縫い付け激しく責め立てた。 「あ・・バカッ・・やだ・・も、イク」 「イケよ・・顔見ながらイキたい」 限界の近い朝陽が眉根を寄せて切なそうに仁斗を見ると、その表情に仁斗も射精感が高まる。 「あ・・あぁ・・イク・・あぁっ!!」 朝陽が射精するのに合わせて肉壁が搾り取る様にキツく締め付けると、仁斗も朝陽を見ながら白濁を注ぎ込んだ。
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