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『反省として、今日は部屋から一歩も出ないでね!じゃないとこれからも無視するから』
本気か冗談かも区別の出来ない条件つきで釘を刺され、行き場のない手を下ろした。
「反省にしては地獄なんだが」
「耐えるんじゃ。嫌われては元も子も無いぞ」
俺への興味が薄れたのか座敷童子は山座りをし、棚にある本を読み始める。切り替えの早さに目を丸めそうになりそうだった。
また馬鹿にされそうだからしないけど。
ベッドに腰を下ろした俺はすることがなく、天井を眺める。カスタードクリーム一色の部屋にヒーローキャラクターのシールがペタリと貼ってある。
「それはあやつが五歳の頃、身長が伸びるようにジャンプしまくったせいで取れなくなったお気にのシールだそうじゃ」
何も聞き出してないのに勝手に答えにきた。この世ならざるものの特徴といったところか。
「……そんな昔からいたのか」
仕方なく、言葉を返す。
「羽神家がここに越してくる前からじゃな」
「長……過ぎないか?」
「その通り。だから、緋露が男の子から男性になった瞬間もここにいたんじゃぞ?」
「変態が」
自慢にももっと種類があるだろうに、確実に俺が弱るネタを無理矢理突っ込んでくるこの意地の悪さはなんだろうか。
「……緋露が可愛いものを可愛いしてる時もいたのか?」
「そりゃあ、赤ん坊の頃からぬいぐるみを抱き締め、抱いてないと夜も眠れなかったらしいからな。ここを出ていく高校生の時まで毎回新しい友を連れてきておったな。……はは、言い方に気をつけよ。お前も大概変態だということは伝わったが」
いつの間にか座敷童子は本を置き、うさぎのぬいぐるみを一匹取っては体には大きいその子の頭を撫でた。
表情は世話をしてきた親みたいな、見守ってきた友のような穏やかな顔を浮かべている。
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