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「……吸血鬼よ」
「知っていたのか」
突然、種族名を言い当てられ和みかかっていた空気がさっきとは違う形でピリつく。
「西洋の妖怪の名は嫌でも耳にするからな」
「ほぅ。俺を毛嫌いしていたのはそれでか」
「対立とかではない。現代で消えいく仲間を見てれば口を噤むものよ。緋露に関しては別じゃが」
「何が言いたい」と俺は真意を問う。
「緋露に寂しい思いはさせるな」
想像もしていなかった返答に今度こそ目を丸くした。余計なお節介とも取れるそれに笑いが込み上げてくるが、彼の瞳は海深くの青から緋色に変化し、髪も真っ赤に染まり上がる。
「我ら妖怪は長い時を過ごすもの。そこに短命の生き物を引き込んではならぬ。たんぽぽの綿毛が風に揺れて飛んでいくようにその時、その時に人間にあった節目がある。お前さんがどういうつもりか知らんが、時に置いていかれる緋露を見るのは勘弁したい」
目を鋭くしても見た目からかそこまでの覇気はない。
この座敷童子は俺たちが血を吸った人間の時を長くさせるのを知った上で話しているんだろう。
「付き合いが長いとそこまで家の住人の成長に踏み込むのか」
「滑稽か?」
「いいや、育ての親に子は似るのだと思ってな」
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