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俺は人間と吸血鬼のハーフだが、基本的に普通の人間と同じように暮らしていける。
しかし、大人になるにつれて吸血鬼の反応が強くなり、定期的に血を拝借しないと体調に影響が出るようになってしまった。
「大丈夫ですか?汗、たくさんかいてますよ?」
夏場。日照りのきつさにフラフラしていた俺に見知らぬ少年が声を掛けてきた。
「目眩みたいなものだから」
「そんなわけにはいきませんよ!ほら、お水にジュースに、栄養ドリンクに……」
貸してもらったハンカチで額の汗を拭いながら、次々と水分がリュックから取り出され、思わず笑ってしまったのをよく覚えている。天然でもあり、心配性でもある緋露は初対面にもかかわらず、誠心誠意向き合ってくれた。
「俺は緋露の意志を尊重するだけさ」
学校が近いこともあって友人になった俺たちは彼がお坊ちゃんということや、人たらしで鈍感だということも散々思い知らされた。
好きになるのを諦めたのに、告白をしてきたのは緋露なんだよな。
人間で唯一、俺を吸血鬼だと知ってもなお、彼は一緒にいてくれる。それだけで幸せだったんだがな。
「……そうか」
座敷童子はまた、読書を再開した。
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