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「で、本当に泊まりに来たんだ」
6月20日、俺は休みを取って実崎さんの家を訪ねた。
その目的は単純明快、幽霊を見るため。彼が休みを取った21日にはもうお祓い(部屋と実崎さん自身にやってもらうらしい)が住んでしまうそうなので、急遽休みを取り無理を言って泊まらせてもらった。
同じ大学生とはいえ学年も学校も違えば特に趣味が合うわけでもないので、行動がやや突飛すぎたかなとは思う。まあ一つ先輩なだけでバイト歴は俺の方が長いし。
幽霊が出るのは夜中らしいので、夜飯を食べてからは寝ないように喋り続けた.途中、「敬語で話さなくてもいいよ」と言われたので崩しながら喋った。
「もともと幽霊信じてるの?」
「うん。一回見てみたかったからさ。でも急に押しかけてごめん」
「別にいいよ。最悪一人も二人も変わらないと思うし」
「まじ?ありがと。でも金は払うよ、二人分だったし。あ、ちなみにどこの部屋に出るの?」
「えーと、主には寝室?寝るときに枕元にいることが多いかも」
「いつから?」
「いつだろ?気づいたのは結構最近かなー。休みの提出した日にはいた気がする」
「ソファーの下とかいますかね、暗いし」
「猫じゃないんだからそんなとこいないと思うけど…」
そんなことをぐだぐだ話しながら幽霊が出るという深夜をまった。ソファーの下からは埃まみれになったピアスが片方だけ出てきて終わって、汚いからと捨てられた。実崎さん昔開けてたんかな。
12時を過ぎ、そろそろだと実崎さんがいうので、急いで布団の設置を始める。ベットの骨組みがあったのになぜ布団なのかと問えば、マットレスが壊れたのだと返ってきた。実崎さんは廊下で何かしていたが、来客用の布団を出し終わる頃には戻ってきた。
「ちょっと来て」
「なんですか……って、本当に何ですかこれ」
「目印」
部屋から出てみれば、廊下には点々と白く光る蓄光のパネルがついていた。100均で売ってるやつだ、とぼんやり眺めていると、実崎さんから説明が入る。
「お祓い明日に予約してるし、あんまり大事にはしたくないんだけど、本当にやばかったらこれ辿って逃げて。玄関に繋がってるから」
1番奥の部屋である寝室から廊下を真っ直ぐ通って玄関、と言う経路でそのパネルは貼られていた。
「でもいままで干渉してきたりとかはないんですよね?」
「これまではそうだけど、人呼んだのは今回が初めてだから。曽我くんがもし霊感ある人だったらヤバいかもしれないし」
念には念を、ということだろう。あまりそんなことがないようにしたいと思いながら、大人しくそれに従うことにした。
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