蜜の香りに誘われて

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「何を考えてるの? ここまでついて来た私を不安にさせないで」  拗ねたようにそう言ってくるミツル、不安なんて僕は知らない。だけど今、彼女の機嫌を損ねるわけにはいかない。 「ごめん、そんなつもりじゃ……」 「じゃあ、私の事を一番に考えて? 私の事が好きだって言ってくれる?」  好き? そういえばそんな感情があると聞いた事もあったな。アイツらは確か…… 「好きだよ、ミツルの事を愛してる」  こんな事を囁き合っていたっけ? 恋愛ドラマとやらで見た二人の男女は。こんな言葉に何の意味があるのか分からないが、ミツルはとても嬉しそうに微笑んだ。 「じゃあ、先にシャワー浴びてくるね?」  ミツルがバスルームに入ったのを確認して、僕は準備を始める。一方的な理由で選ばれた彼女に非はない、だからなるべく苦痛は与えないようにしてあげなければ。  ミツルに見つからないように薬を隠して、僕は彼女を待った。ミツルが出てくると今度は僕が変わりにシャワーを浴びる。  今夜、僕はやっと……  「愛してる」「ミツルが好き」と何度も繰り返し、どこまでも甘い言葉で彼女を酔わせてしまえば……ほら、もう君は僕の思うがままになってくれる。  「嬉しい」「私もハチヤが好き」とミツルが答えると少し苦しいのは何故だろう?  ……その夜、僕は彼女の身体の奥深くに種を植え付けた。
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