それが恋だと初めて気がつきました。

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「ねえナオちゃん。考えたんだけどね。もういっそさ、結婚してくれないかな。おれのお嫁さんになって」  ベッドの上で横向きに寝転んだまま、背後から僕を抱きしめながらそんな風にタスクがぼやく。ぬいぐるみにするみたいに僕の頭に頬ずりをするタスクの体温を直接肌で感じながら、僕は照れと気恥ずかしさでそっけなく、小声になってぼそぼそと呟く。 「……今でも十分、そんな感じだと思うんだけど」  そもそも僕とタスクは家族だ。これまでもそうだし、これからもずっとそれは変わらない。  僕がそう返すと、タスクはわかりやすく拗ねたように僕にのしかかる。 「えー。目に見える証明が欲しいんだよね。ナオちゃんは、おれだけの生涯のパートナーだよ、っていうー」 「にぃって結構ロマンチストだよね。職業柄?」 「いや、ナオちゃんがおれの天使だから」 「それはちょっと、意味がわかんない……」 「えー」  他愛のない話をタスクと交わしながら僕はほんのりとした幸せをかみしめる。  そんなとき、僕の携帯電話の画面に灯りがついた。ライ〇だ。送ってきた主は青山昭介だ。 『ライ〇見たか? もうマンションの下まで来てるんだけど』  そんな昭介からのメッセージを見て、僕は顔色を変えて飛び起きる。  今日、約束があったのを思い出した。 「忘れてた。にぃ、もう青山くんとミツルギさん下まで来てるって。迎えに行かないと!」 「……そういえば。ナオちゃんの引っ越し祝いに来るのって、今日だっけ」 「そうだよ! ミツルギさん、うちの噂のキングサイズのベッドが見たいって言ってた」 「それって、……これだよね。とても見せられる状態じゃ、ないよ……?」  体を起こしたタスクと僕は顔を見合わせて押し黙る。  『ミツルギ』さんは昭介の年上の恋人で、父の部下でもある人だ。二人が出会ったいきさつは詳しくは知らないけれど、色々あった末に、現在はとても仲睦まじい。  昭介もそうだけれど、ミツルギさんも職業柄、洞察力には長けている。そんな二人を部屋に上げて、現状を誤魔化せるとは思えないけれど。 「と、とにかく。着替えて、準備して、僕が二人を迎えに行くから。にぃはとにかくここをなんとかして!」 「わかった。とりあえずシーツと掛け布団カバーは洗濯機に入れてまわしておくよ。布団は干していても……不自然じゃないよね。天気も良いし」 「……」  自分に言い聞かせるようなタスクの呟きに僕は答えられなかった。けれど頷いて、急いで行動を始める。  慌ただしい。でも悪くない、幸せが実感できる日常だ。それは始まったばかりだけれど、これからも続いていく。  そうだ、と僕はタスクに声をかける。 「にぃ。おはよう。これからもよろしく」  タスクはきょとんとして、そして、笑顔を向けてくれた。 「おはよう。こちらこそ、よろしくね」  僕はタスクに、めいっぱい最上級の、笑みを返した。    おわり
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