それが恋だと初めて気がつきました。

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   声だけで応対する手間を省き、直接玄関のドアを開ける。 「すみません、遅くなりまして。どなたですかー?」 「……こんばんは。本郷寺」  玄関口に立って待っていた人物が、僕を見て、ホッとしたように表情を緩めた。目の前に立っている人物に、僕は驚きを隠せない。  クラスメイトの青山昭介がそこに立っていた 「青山くん。どうしてうちに?」  突然のことで僕は動揺する。まさか昭介が訪ねてくるなんて思いもしなかった。先ほどまでの緩んだプライベート時間を思い出し、急に恥ずかしさを覚える。昭介には気づかれることはないはずだが、万が一僕が女性物の下着をつけているのだと知られたらと思うと、顔から火が噴きそうだ。  そんな僕の慌ただしい内心とは裏腹に、昭介は普段通りで落ち着いた読めない表情をしている。  昭介が少し目を伏せた。 「夜分に悪い。でもどうしても会っておきたくて。これ、本郷寺のだろう。忘れ物」  そう言って手渡されたのは、僕が学校に置き忘れていた傘だった。 「確かに僕の傘だね。わざわざ家まで持ってきてくれたの? ありがとう、青山くん」  僕は素直に礼を言って傘を受け取る。そんな僕の手を、ふいに昭介が握るように掴んだ。僕はとっさに昭介の顔を見上げる。 「青山くん……?」 「本郷寺に会って言いたいことがあったから。あのときは言えなかったけど。ちゃんと気持ちを伝えておきたい。おれは本郷寺が好きだ」 「え?」 「たとえ本郷寺に他に恋人がいても。おれの気持ちを知ってほしいって思った。本心ではそいつから奪い取りたいと思ってる」 「え……っと」 「諦める気はないから。それを、本郷寺は知っておいて。じゃあこれで」  言い終えた昭介はサッと身をひるがえして去って行った。僕が引き止める間もない。あっという間の出来事だった。  傘を杖がわりにした僕は呆然としていた。伝えられた言葉に、なにも返すことができなかった。  ―……告白、だよね。今のは。  普段向けられることがない言葉を受けて体が熱くなるのは条件反射だ。恋心はないのに体が火照って汗が噴き出てくる。 「……あっちぃ……」  呟いて、シャツの首元を扇ぐように引っ張りながら、僕は傘を持って家に戻った。  今回のことを受けて、いずれ昭介にははっきりとした答えを示さなければいけないけれど、今はなにも考えたくない気分だ。突然のことで混乱している。冷静な判断ができそうにない。  ―たとえば夏祭りで僕が恋人と仲良くしているところとか見せたら、青山くんは僕を諦めたりしてくれるかな……なんて。……ひどい奴だね、僕は。  実在しない僕の恋人に頼りたくなって、僕は自虐するように苦笑いを浮かべる。  
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