01◆9月1-1・シエラの現状

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01◆9月1-1・シエラの現状

まだまだむし暑く国民の大半が半袖姿を披露するモレン国の9月。 残暑厳しいこの月は学校・会社の新年度に当たり、多方面で『始まり』の時期であった。 首都ベランクリーのマンションに住むシエラも当然その環境の一員である。 しかし彼女にとっては今月に限らず今年が様々な『新しい』を迎える転機となった。 6月の結婚と就職が最たる例だ。 3年間の交際を経て6月8日にウィルとの結婚を果たした。 相も変わらず別々の暮らしだが、これまで同様たまのデートを重ね愛を育んでいる。左手薬指の指輪を見るたびに幸福に包まれるシエラだ。 ただしそれはプライベートでの出来事。新年度を待たずして6月下旬に福祉施設に入社し、ここまでは幸福だったのだが……。 問題は入社のひと月半後、いまも継続中の福祉事業所への移動だ。晴れない気分にストレスを溜めている。 念願だった福祉関係の仕事。ようやく内定しヘルパーとして直接障害者の介護をし、ふれあいたいと望んでいた。 そんな彼女を待っていたのは事務職。それも事業所への移動付き。 入社した当初は採用通知を受けた福祉施設で介護研修に励み、実践形式で先輩たちから指導を受けた。 体力的にも精神的にもハードな職種であると実感したがやりがいも認めた。 障害者の人々から新人への励ましを受けた時の喜びは感慨ひとしおだ。彼らの役に立ちたい。ずっと続けていきたいと望んだ。 だがその研修中に儚げな容貌が事業所からの視察員の目に止まり移動を命じられた。 綺麗な顔立ちと長身でスレンダーな抜群のスタイルは例えスポーツウエアに身を包んでいても隠しきれず、いつも注目の的だった。 末は受付か秘書か。移動を命じた側は彼女も喜んでいると信じていた。 上役の思惑なんてシエラには知ったことではない。詳細も知らされずのまさかの移動に驚くのみ。 短気な性格のシエラであるが協調性は備わっており、職場内では立場をわきまえる。 しかしこの件に関してはどうしても納得がいかず、上司に再移動を申し込んだ。 「あと3年我慢してくれ。内部経験を積んで経営実態を勉強してからでも遅くはないよ」 都合の良い返答にシエラは言っても無駄と諦め、それ以後反論はせず今に至る。 ひと月以上が経ち真面目な彼女は納得しないまでも与えられた仕事はこなした。会議や社外研修にも参加した。 でも同期が介護に励む様を耳にするたび羨ましくなる。深くて重い吐息を人知れず漏らすしかなかった。 * ストレスの溜まるシエラの相談役は友人ケイだった。 メール交換をしたりテレビ電話で会話したり、週末に会い食事をしたり。陽気な性格の彼に救われていた。 本日もカフェで対面中だ。改善の兆しが見えない彼女の悩みに、ケイは青い瞳を向けてアドバイスを口にする。
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