3 夏の思い出

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3 夏の思い出

あれは2年に上がって、亜希子先輩が留学先に旅立って、三ヶ月後の夏頃だ。 大河が車の免許を合宿で取りに行くと言い出したのだ。 夏休みを使って、旅行がてらに行くと。 俺はアメリカの車の免許証を持ってはいたが、日本では免許を持っていなかった。 もちろん手続きをすれば簡単に日本でも運転できたのだが、旅行がてらに行くという言葉に惹かれた。 日本のちょっと田舎に行って二週間で取るのだと。 その時合宿免許は学生の間でも流行っていたし、行ったことのない日本の田舎に行ってみたいと思った。 俺も大河のその合宿に付き合うことにしたのだ。 その合宿先は日本海側の風光明媚なところだった。 一日中ドライビングスクールで授業を受け夕方は海で遊んだ。 日本の西側にあるため、東京よりも日が長い。 夕方7時半くらいに日が沈む。 天気のいい夕方は合宿場から歩いていける浜辺で大河と夕陽を眺めに行ったものだ。 合宿場でも、俺らはモテていた。 いろんな地方から女子大生も来ていて、俺も大河もモテた。 だが、大河は彼女がいるからと断り続ける。 それを見ていたら、俺も軽率に手を出すのはやめようと思った。 それでも女子大生に囲まれる。 合宿が終わるその日の夜、俺は同じ合宿に来ていた女の子から告白された。 だが、大河に拙僧のない奴だと思われたくなかったのかもしれない。 俺は潔く断った。 そんな俺の姿を見て、大河は少し驚いた風だった。 なんとなく、俺の素行の噂は耳にしていたのだろうから・・・。
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