魔女が住む家

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ゴールデンウィークが終わり、連休明けの学校が始まった頃。 休み気分が抜けずだらしなさが目立つ生徒たちとは対照的に、私たち教師には大切な仕事がある。それは家庭訪問だ。 「お世話になっております。まなみさんの担任の里中です。」 連休明け最初の家庭訪問先は、倉橋まなみさんのお宅。中学二年生とは思えないほど落ち着いており、頭もよくとても礼儀正しい生徒だ。 そんなまなみさんの家なのに、行くのが怖く、一度深呼吸をしてからインターホンを押した。 なぜ怖かったのかというと、昨日まなみさんに気になることを言われたからだ。 「うちには魔女がいるんです。」 ゴールデンウィーク前の最終日の放課後、まなみさんは真剣な表情ではっきりと言った。「休み明けの最初の家庭訪問はまなみさん家だから、よろしくね」と伝えたところ、そう返ってきたのだ。 「魔女って、まさかお母さんのこと?」 まなみさんの家は母子家庭なので、自然とそう返した。するとまなみさんは表情を崩さずに小さく頷いた。 「そんなこと言っちゃだめでしょ。お母さん、良い人じゃない。」 まなみさんのお母さんには始業式の日に会ったことがあるが、柔らかい雰囲気でとても感じのいい方だった。 「先生も今にわかりますよ。あの人がどんな人かが。」 自分の母親を”あの人”と呼ぶまなみさんは、とても冷たい目をしていた。もしかしたら家では豹変するタイプの人なのでは、と失礼ながらそういう可能性も考えてしまい、少し怖くなってしまった。
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