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すると玄関のドアが開く音がした。まなみさんが帰ってきたようだ。
「まなみ、お帰りなさい。里中先生がいらっしゃっているわよ。」
少し待っててください、とお母さんが言い、玄関に向かった。そのあとお母さんがまなみさんの肩に手を添えて連れてきた。無表情なまなみさんが、私の目の前に立つ。
「こんにちは、まなみさん。お邪魔してます。」
私が立ち上がってそういうと、まなみさんはゆっくりテーブルに目を向けた。するとまなみさんの身体が小刻みに震え始めた。
「…食べさせたの?それ…。」
私は先ほど食べた和菓子に目を移す。何のことかわからず、首を傾けたのはお母さんも同じだった。
「どうしたのよ。先生のために用意した特別な和菓子よ。」
お母さんがそう言った瞬間、まなみさんはお母さんを突き飛ばし、全速力でキッチンに向かった。私はお母さんの元に駆け寄り、倒れた身体を支える。
「大丈夫ですか?!」
「はい…。ありがとうございます。」
尻もちをついただけでどこもぶつけていないようだ。
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