煮っころがしを探せ

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「煮っころがしは難しい料理だよなぁ……」  部屋に戻る途中、僕は思わずそう呟かずにはいられなかった。  おふくろの味、なんて言われている料理に限って、ちょっとした失敗が命取りになってしまう物なのだ。    自室のドアを開けると、ふわりと流れだしてくるのは醤油と出汁の匂い。   「夕飯の支度の途中だっけなぁ……」  部屋に入り、電気をつけたところで思わず固まった。  目線の先にあるのは出汁の張られた鍋。  こげ茶色の水面が蛍光灯を静かに映している。 「しまった……。蓋をして無かったか……」  本来であれば、そこにあるはずのジャガイモやニンジン、牛肉に白滝たちは悉く姿を消していた。  どうやら、僕の作った肉じゃがも随分と元気な奴らだったようだ。  さて、どこから探したものか……。
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