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「元気な煮っころがしでな」
同じアパートに住んでいる友人の志倉は、半笑いで僕にそう言った。
ちょっと困ったことになった、という志倉から名電話で呼び出されてみたら、待ち受けていたのはムカつく顔と言動だった。
こっちは夕飯の支度をしていた手を止めてまで駆けつけてやったというのに。
「出来立てのを味見しようかと思ったらこの様だよ」
「出来立てを?」
「祖母さんが出来立てのはかぼちゃがほくほくで旨いって言ってたんだよ」
そこは否定しないが、問題はどうやって味見に挑んだかだ。
「菜箸で適当に掴もうとしたんだろ」
「……返す言葉もない」
彼はそう言ってガクリと項垂れた。
全く、大した箸使いも出来ないくせに、横着しようとするからこういう目に遭うのだ。
小皿を使うとか、方法はいくらでもあるだろうに。
「面目ないとはこの事だ」
「ああそうだな。反省しろ」
「田舎のばーちゃんやらはひょいひょいとやってたんだけどなぁ……」
「そういう人達は異次元の箸捌き術をお持ちなんだよ。俺達が草野球にも満たないお遊びだとしたら、向こうはメジャーリーガーだ」
「……確かに」
自分の腕を過信するから、カボチャがもったいないことになる。
「それで、カボチャはどこへ行った?」
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