砂漠の宮殿に夢見る夢中の守護者

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 私の名はナーフィア・ユスラ=アサード。今ホログラムTVでは、私の名と同じアサード王国の歴史特集を放送している。私の両親の故郷は、それぞれ隣接した国だったが、武装組織が発起して広域に渡る戦乱が勃発し、両国の国境など存在しなくなってしまった。奇しくもそれは、分離する前のアサード王国の領域と重なるものだった。  両親は戦乱を避けて亡命し、はるか遠くの日本へとたどり着いた。しかし、それからの難民としての生活は決して楽ではなかったと、涙ながらに母が語っていたのをよく覚えている。その苦しい難民生活の最中に私が産まれたのは、まるで不毛の砂漠に一輪の花が咲いたようだったと、父は子守唄代わりによくささやいてくれた。  目の前の立体映像をじっと見つめる。荒涼とした砂漠にぽっかりと浮かぶ古代の遺跡群。初めて観る場所だったが、どこか懐かしい感じがするのは、やはり私のDNAにこの土地の記憶が埋め込まれているせいなのだろうか。目を閉じると私は夢の中にいた。その古代遺跡がまだ黄金色(こんじきいろ)に輝いていた頃の夢だ。映像の中では乾燥した大地だったものが、王宮や城下に張り巡らされた水路の水で潤ったオアシスに変わっていた。
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