砂漠の宮殿に夢見る夢中の守護者

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 白装束に身を包んだ王子らしき人物が私に向かって手招きしている。口元を白い布で覆ったその少年がほんとうに王子かどうかは、わからないけれど、あのきらびやかな衣装は王族のものだろうし、彼が私を招待した先はキラキラと光り輝く王宮の中だったから、きっと彼は王子なのだろう。  王宮の中に入ると、王子が私に言う。 「うちには大きなペルシャ猫がいるんだよ。こんなにこんなに大きな。」  彼は腕を目いっぱい広げてみせたが、私はなにもそんなに大げさに言わなくてもいいのにと思ってしまった。 「ペルシャ猫って、そんなに大きかったかな?」  私がそう言うと、王子はぷくっとふくれっ(つら)を見せて、私の腕を引っ張ると王宮中を連れ回すのだった。けれども、いくら宮殿内を探し回ってもいっこうに大きなペルシャ猫の姿はなかった。それどころかその広い敷地内にいるのは私と王子二人きりのようで、異様な雰囲気に包まれた王宮から早く出たい気持ちにおそわれる。
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