砂漠の宮殿に夢見る夢中の守護者

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「ねえ、大きなペルシャ猫も見当たらないし、私たちのほかに誰もいないみたいじゃない?」  私のひとことに王子は頭をかきながら応える。 「うーん、どうやら外の世界に逃げちゃったみたいだね。ペルシャ猫も王宮の人たちも。今頃ニイちゃんが必死になって追いかけているはずさ。おいらも早く行かないと、ニイちゃんが待っているから。」  王子はそう言うやいなや、すぐに駆け出してしまった。その拍子に、彼の口元を覆っている白い布がはがれたが、彼の顔をよく見ると、どこかで見たことのある顔だった。さて、どこで見たことがあったっけ。私はその少年を追いかけたが、王宮の大きな扉をやっと開けたときには、もう姿が見えなくなっていた。  この夢の世界には残念ながら、私独りだけ取り残されてしまったようだ。孤独にさいなまれながらポロポロと涙を流していると、それに呼応するように夢のオアシスはどんどんと水を放出し、涙の枯れる頃にはオアシスだった場所が干からび元の砂漠へと戻っていた。黄金の宮殿は崩れ果て、こちらもホログラムで観た遺跡の姿に戻ってしまった。さらに地面の砂は巨大なアリ地獄のように渦を巻きはじめ、私はその渦の中へみるみる吸い込まれてしまうのだった。アリ地獄に吸い込まれる中で私は、ふと遠くのほうに、明らかに大きな猫が二匹いるのを見かけた。
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