甘さと苦さ

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私のことも聞きたいと言っていたのに、聞いてこない。 まぁ、こっちに来てから、すぐに徹君と会ったし、何もないこと位わかっているんだろう。 さかのぼっても、恋愛経験は多くない。 ちらりと、この間のメールが頭をよぎった。 「徹君。私の話も聞きたい?」 「んー。……俺、聞いたら嫉妬しそう」 徹君でも嫉妬するのか。私に嫉妬なんて、なんだかうれしい。 「ははは、嫉妬するような話はないよ」 全部、昔の話。 でも、昔の人が、仕事関連で連絡を取るかもしれない立場になったことは伝えておいたほうがいいのかもしれない。後で誤解を招きたくない。 「こっちに来てすぐ、徹君に会っているから、こっちはそれだけだけど」 「んー、そう?」 と、私の肩に頭をのせる。 なにか引っかかるところがあるのかな? 「え?なにかある?」 「アンドリューは?なんかいい感じじゃなかった?」 あれは、違う。はっきりあの子はゲイだと言ったら、いいんだろうけど、それは私の言うところではない。 「アンドリューは、違うよ。いい子だから、仲よくしてるだけ。お互いに絶対違う感じ」 「そうかぁー。じゃ、田口先輩は?」 こっちは、なんなんだろうか。よくわからない。 「んー、田口君の暇つぶし?からかわれただけの気がするけど。ただ、軽いんじゃないかな。何もないよ」 「ん、ま、いいか」 徹君が私の耳をいじりだす。 「徹君。こっちでは何もないんだけど、前の会社で一年前まで、付き合ってた、ような、人がいるの」 気合を入れて、その話題を持ち出した。
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