甘さと苦さ

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脱衣場には、私用にタオルや着替えが置いてくれてある。 さっき、コンビニから帰って来た徹くんに「ハイ、これ」っとコンビニの袋を渡されて、中を見ると、アイスクリームと歯ブラシセット、小さい化粧水などお泊り用品が入っていた。びっくりすることに、着替えの下着まで。 この田舎で、自分の住んでいるアパートの階下のコンビニで女性用の着替えを買ったのかと思うと、その勇気に笑えてきた。 「凄いね。根性あるなぁ」 と、袋を覗きながら言うと、意味を察したのか、 「俺が無理やり誘ったし」 という事だった。 「ありがとうございます」 かしこまってお礼を言った。 置いてくれてあった、Tシャツに着替えたけど、ボトムスが見当たらない。 「トオルくん、このドライヤー借りていい?あと、悪いけど、出たら、ショートパンツか何か貸してください」 お願いして、そのままドライヤーをしていると、ガラっと浴室のドアが開いて、徹君が出てきて、くるりとタオルを巻きつける。 見ないようにしているけど、鏡に映る上半身裸の徹君は、正直、やばい。 「ボトムスいる?寒い?」 「んー、寒くはないけど」 Tシャツは大きくって、お尻まで隠れるけど、素足がすこし恥ずかしい。 「俺のだと、ゆるゆるだと思うけど、履く?」 と聞いて、ふっと甘い目をすると、 「履いても、すぐ脱がすけど」 と付け足した。 なんと答えていいのかわからずに言葉に詰まっていると、くすっと笑って、 「風邪ひいたら、困るから、待ってて」 とルームウェアを取りに行ってくれた。 借りて履いても、確かにそれはゆるゆるで、持っていた髪のゴムで横をとめる。 その格好でソファーに座ると、徹君も着替えを済ませて、二人で買ってきてくれたアイスクリームを食べた。 湯上りに冷たいアイスが気持ちがいい。 徹君は食べるのが早い。 がっついているわけではないのに、速いから、男の人だなぁと思う。 さっさと食べ終わると、こっちを見ている。 「これも欲しい?」と聞いてみる。 「いや、葵ちゃんがアイス食べるの見てるだけ」
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