甘さと苦さ

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ベットの上で、Tシャツを脱がされる。 私ばかり裸になるのが嫌で、トオル君のTシャツを引っ張ると、自分もTシャツを脱いでくれた。 体中にキスが降る。 息が上がって、情けない声になる。 「葵、葵。壁、そんな厚くないから、今日は、しぃー、ね」 と、子供にするように指を口に当てている。 静かにって言われても、徹君はそのまま私の身体をもてあそんでいる。 「だって。だって、徹がそういうことするじゃない」 と反抗してみるものの、徹君は面白がって、「しー」と言いながら、続けているだけだ。 「隣のやつに聞かせたくない。葵ちゃん、今日はちょっと我慢」 声を出さないように、息を逃す。 深く深く息をして、なんとか声を上げないように、我慢する。 代わりに、なるべく、小さい声で、徹君の名前を呼び捨てで何回も呼ぶ。 そのたびに、徹は私を食べるようなキスで口をふさぐ。 徹君に触られるたび、ひどく体が震えているのに、声を出さないように口で浅い息をしていたら、自然と涙が出てしまった。 徹君がまたキスで口をふさいでくれる。 目にキスをして、涙を拭いて、そのまま静かに激しく抱き続ける。
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