甘さと苦さ

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翌朝、徹君の目覚まし音で目が覚めた。 私はちゃんとお布団のなかで、Tシャツだけ着て寝ていた。 瞼が重い。眠気に負けてしまいそう。 「もうちょっと、寝てて」 と、優しい声がする。 次に目を開けると、徹君がコーヒーをマグカップに入れて持ってきてくれた。 「起きれる?」 もぞもぞと起き上がると、コーヒーを渡してくれた。 枕を重ねて寄りかかれるようにしてくれる。 コーヒーをこぼさないように両手で持つと、徹君がベットに腰かけて、髪の毛を直してくれた。 「ちょっと昨日、無理させた。ごめん」 あまり最後まで覚えていないけど、泣いたのは覚えているから、急に恥ずかしくなる。 顔が赤くなりそうで、隠すようにコーヒーに口をつける。 すこしコーヒーを頂いて、落ち着くと、徹君がもう出勤用の服なのに気がつく。 「徹君、もう出る時間?」 「ん、もうちょっと。大丈夫」 「今、私も出る。ごめん、長居しちゃった」迷惑をかけたくなくって、慌てて起き上がろうとする。 「いいよ。ゆっくりで。カギ閉めて行ってくれたら、いいから。コーヒーもうちょっと入れてあるし、シャワーして、ゆっくりしてって」 「はい、すみません」 おでこにキスが落ちてきた。 甘い。とろけるほどにあまい。 抜け出せないほどに、甘いから、ずっとこのままでいたい。 先のことを考えたくなくなる。
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