女子会

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私のグラスがあくまで少しの間、私が今まで東京で暮らしていて、最近地元へ戻ったこと、思い切って中古の一軒家を買ったことや、今は地元の学習塾で英会話の先生をやっている事を簡単に話した。 トオル君も、樹君はお父さんの施工会社を継いでいて、子供が一人いることや、トオル君が建築士の資格をとって、二年前まで横浜にいたことを話してくれてた。二年前に母親の病気をきっかけに、帰省して、今はこっちの叔父さんの設計事務所で働いているらしい。 樹君と徹くんのお母様は、その頃、癌でお亡くなりになった。それもSNSで見て知っていた。樹君にはもうずっと連絡してなくて、オンライン上でも弔いの言葉もかけれなくって、ただ事実を知っただけだったけど。 こうしてバーで仕事や色々な事を話していると、私の知っているトオル君は、すごく小さくて、かわいかったのに、今はなんか、しっかりしているなぁと感心して、「トオル君、かわいかったのに、今はかっこいいねぇ」と褒めたら「はは、酔っぱらい」といなされた。 でも本当に。 さっきからこっそりノンアルのグラスを持つ手が大きくって、色っぽいと思っている。 親切な若者相手に、はしたなくて、申し訳ない。 酔ってるなぁ。 「送ってくれるから、おごりね」 お勘定を済ませようとすると自分の分は払うというトオル君のお札をしまわせて、お手洗いに寄ろうとバーチェアから立ち上がって、少しフワリとする。 その瞬間、力強くぐっと腕を支えられ、反動でトオル君にかなり近寄ってしまって、びっくりする。 「ご、ごめん、大丈夫です」 「危なっかしいな、佐藤さん」 「はは、ごめんなさい〜」 近くに立つとトオル君はずいぶん背が高く、しっかりしてて、焦った。 ふらつかないようにお手洗いまで集中して歩く。 個室に入って、ふうーと大きなため息をついた。 見た目は良いし、話してみたらしっかりしてて良い子だし、なんだかとてもスマートだ。 これは、ドタキャンの代わりに、イケメンを鑑賞して癒やされろってことかしら。
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