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ルールもわからないまま、始まった試合を観戦する。
サッカーのようなの、と思っていたけど、サッカーよりコートが小さい分、動きが激しく見える。
赤いのを羽織ったのが徹君のチームで、青いのを着たチームと対戦している。
徹君がちゃんとスポーツしているのは初めてみた。
普通にうまい。
スーパースターじゃないけど、楽しそうにやっているのが伝わってくるし、ゴールを決めた時は、かっこよかった。
もう、私の目には、徹君がなにしてても、かっこいいのかもしれない。
休憩をはさんで、後半までずっと見ていたけど、途中、樹君も参加した。
樹君、野球部でセカンドだったな、とか思い出した。
徹君、野球部で何のポジションだったんだろう。
樹君が上手にパスしたりすると、優香さんは一段大きく拍手した。
「パパ、すごいね」
と、遼君に話しかけたり、二人でパパを応援する姿はとてもかわいらしい。
二人でならんで、こうして応援しているけど、優香さんは私のことをどう聞いているのか?ちょっと不思議に思った。
徹君は樹君に付き合うことを言うと言っていたけど、あの後、実際に報告したのか聞いてない。
応援しに来るくらいだから、付き合っていると聞いてなくても、そう思っているかもしれない。
コート脇にも家族や友人が結構いて、邪魔にならない程度に距離を開けてコートを囲んでいる。
ボールも確かに、時々、応援している人のほうへ飛んでいく。
見ていると、徹君たちを応援している女性たちが目についた。
BBQで一緒になった日野さんと橘さんともう一人の女の子だった。
私の視線に気が付いたのか、優香さんが
「木元君がよく誘うんですよ。あの同僚の子に気があるのかな」
と、橘さんを指して、にっこり笑う。
木元君、橘さんかぁ。
「あ、そうですか。ちょっと前に、BBQで一緒だったんです」
気にかけた理由はそれだけだとアピールしてみる。
試合はかなりいい勝負で、夢中になってみていたら、すぐに終わってしまった。一点差で徹君のチームが逃げ切った。普通のサッカーのつもりでいたら、激しい分、結構短い。
「この後、ちょっと休憩で、すぐ次の試合だそうですよ」
と、優香さんが教えてくれる。
続けての試合はきついような気がするけど、さっきまで休憩をしていたところを見ると、スケジュールはくじ引きの運のようだ。
休憩中、優香さんは遼君の歩きたいのに、付き合って、コートまで下りていくという。
私は、すぐに次の試合ならと遠慮して、ベンチに座ったまま、スポーツドリンクを飲んでいる徹君を見つめていた。
徹君が気が付いて、こっちを見上げて、軽く手を振ってくれた。小さく手を振り返す。
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