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コート脇で、チームが休憩しながら話をしている。
少しだけ出場した補欠メンバーはまだ余裕そうだけど、フルで出ていた徹君と木元君はタオルで汗を拭いている。
次の試合が隣のコートで始まると、二人はスタメンではなかった。川西さんの甥っ子だという男の子が樹君とスタメンで参加している。
対戦チームは十代じゃないか?というような若い子が多いチームで、動きも早い。
優香さんと遼君が階段を上がって、ギャラリーに戻ってきた。
遼君は興奮していて、座るどころか、ギャラリーに戻っても、ちょこちょこと歩き回っている。
「ちょっと変わりましょうか。私が遼君、追いかけますよ」
優香さんに声をかけて、子守を申し受ける。優香さんだって、旦那さんが出ている間くらい、応援したいだろう。
お母さんの目の届く範囲にいようと、ギャラリーを端から端まで、小さな男の子の足取りを注意深く見守って一緒に往復する。
優香さんの前を通ったら、遼くんもさすがに疲れたのか優香さんに抱っこをせがんで落ち着いた。
コートでは、二点差で後半になって、徹君と木元君が参加している。
先ほどよりもぶつかったり、すこし激しい。
時折、ギャラリーにまで響く声で、パスを指示する声や、少し荒っぽいきつめの呼び声も上がる。徹君の声も響いて、普段見ない男の子っぽい姿に、ちょっとドキドキした。
結局、この試合は4ー4の引き分けだった。
汗を拭きながら、本当に楽しそうに笑っている。
あの人、私の彼氏なのかと思うと、ニヤニヤしてしまうほどにかっこいい。
ギャラリーから降りて合流しようかと、立ち上がると、視界に橘さんたちが木元くんに話しかけたのが入って立ち止まった。
もれなく木元君の隣にいた徹君も女の子達との会話に入っている。
日野さんが徹君に話しかけている。
川遊びで会った時、牽制された気がしたし、彼女が可愛らしく笑っている様子が、彼女の徹君への好意のように見える。
二人の様子を見ていると、心臓が忙しくなる。
徹君は私の彼なの、もう私のだから、と頭の中で呟いて、ハッとした。
日野さんは、もしかしたら私よりも長く徹君を好きなのかもしれない。
彼女や他の人から見たら、今年、ぱっと引っ越してきた私が、日野さんの好きな人を横取りしていったということなのかもしれない。
日野さんの恋の邪魔をしているのが、私。
「下に行きましょうか」
と、優香さんに声をかけられて我に返る。
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