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葵がシャワーしに行くと、逃げるように腕をすり抜けて行く。
みんなの前で俺の名前を呼び捨てにした事を、意地悪した、と気にしているようだけど、俺はかなり舞い上がっていた。
葵と付き合い始めた事は、隠す気もなかったし、試合に呼んだ事でチームにも自然に伝わればいいと思っていた。
自然に呼びかけられたけど、葵が緊張していたのが、わかった。
葵は呼び捨てはまだ慣れないと言って、これまで「トオル」と呼ぶのはベットのなかだけだった。人前ではずっと「徹君」だ。
木元の狙ってる女の子達が側にいたので、先手を打って、なんとなく釘を刺したのだろうというのは分かった。
普段、周りを気にしたり、気配りしてる彼女が見せた小さな嫉妬が可愛らしかった。
その上、一度始めた事を辞めるわけにも行かず、兄貴の前でも「トオル」だった。
本人はよっぽど呼び捨てが気恥ずかしいのか、機転を聞かせて、名前を呼ばずに「ねぇ」、とか、俺のTシャツの裾を引っ張ることに変更したようだったけど、それすら親密さをアピールしているようだった。
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