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機嫌よく飲んでいた。
キャンプ場のトイレから戻ろうとして、日野さんに話しかけられた時は少し驚いた。
木元がよく誘う、橘さんの友達で、こういうイベントによく参加する。よく話しかけてくれる気のいい女の子だけど、それ以上ではない。
「徹君、佐藤さんと付き合ってるの?」
「え、あぁ。そうだけど」
と、応えて、一緒にBBQ場の方へ歩き出そうとすると、そうなんだ、と言いながら、まだ話がある、というように日野さんは足を止めた。
「日野さん?」
振り返って、様子を伺う。
「この間のBBQじゃ、田口さんと仲が良いみたいだったから、びっくりしちゃった」
少し早口で言い切って、下を向いている。
決めたセリフで精一杯、攻撃しているようだった。
それにしても、嫌な名前を出してくる。
BBQの時、二人で話していたのを日野さんも見たのだろう。
葵の腕を掴んで、連絡先を交換してたのを思い出すと未だにイライラする。
「あぁ、うん。田口さん、葵の事、狙ってたんじゃない? あの人、節操がないから」
冗談ぽく言って躱す。
「俺、譲る気、さらさら無いけど」
と付け足すと、日野さんがびっくりしたようにこっちを見た。
親切な忠告のつもりなのか、横槍を入れるつもりなのか分からないけれど、今日、葵が俺を呼び捨てにしたのは、この子が関係しているようだった。
「あはは。そう。凄いね」
日野さんが作ったような笑いを浮かべる。
「行こうか」
と、促してグループへ合流した。
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