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夕食時から飲んでいるから、かなり酔いが回っている。
田口君が携帯を持って、外へ話に行っている間に、繭ちゃんとたわいもないおしゃべりする。
「いろんな人がいて、面白いね」
ずっと人間観察している繭ちゃんがカクテルをちびちび飲みながら言う。
「アンドリューもいい感じだし」
カウンターを見れば、今度は二人で踊りに行く様子だ。
「王子、狙われているよねえ」
繭ちゃんがけらけらと笑っている。
田口君はさっきも、男の人に話しかけられていた。
あだ名が王子だと、さっき教えたら、面白がってずっとそう呼んでいる。
田口君はぱっと人目を惹くハンサムだから、繭ちゃんのお眼鏡にかなったのかもしれない。
「田口君、どう?」
「胡散臭い」
繭ちゃんが首をかしげて、少し考えて、はっきり言う。
胡散臭い。
あんまりにピッタリの形容詞で、あははっと大笑いしてしまった。
「いい人だよ、軽いみたいだけど。今日もついてきてくれたし」
フォローをいれて、笑っていると、田口君が帰ってきた。
「葵さん、携帯、見てないでしょ。心配されてる」
と言われて、携帯を確認すると、徹君からしばらく前に
『式、無事終わりました。今から軽く二次会。そっちは大丈夫?』
というメッセージが入っていた。
確かに、夕方、電話で泣いておいて、薄情な奴だった、と反省して今更ながら『今、みんなでバーにいます。たのしいよ』と返事をした。
アンドリューが踊りながら、こっちに手を振っている。
おいで、おいで、と手招きされて、断れず、またダンスフロアへ呼ばれていった。
おしゃれして、酔っぱらって、ふわふわして、お友達とふざけていたら、今日のもやもやは飛んでいく。
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